ローン事前審査の趣旨や目的

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事前審査とは住宅ローン貸出について、金融機関の判断を不動産の売買契約の先だって提示してくれるサービスのことです。

大手銀行、地方銀行などであれば、事前審査の判断は信頼できるとされています。その他の金融機関で一部の事前審査では信頼できないものがあります。

「ローンが通った」という認識を持つには審査の信頼性は要確認です。不動産業者を変えて商談をする場合には特に重要です。

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事前審査でやること

事前審査とは金融機関のサービスで、ローン貸出の判断について、不動産の売買契約に先だって金融機関が提示してくれます。どの金融機関でも、原則無料で対応してくれます。

不動産の売買契約は、基本は印紙を貼付します。契約をすれば、当事者は1か月程度は拘束されて、皆様が想像するより、いろんな当事者が右往左往します。そのあと、ローンが通らないからキャンセルとなると、売却のタイミングを失ってたいへんです。審査なしに売買契約をするとなると、いささか怖い部分もあります。そのような意味では事前審査はたいへんありがたいサービスです。

事前審査のサービスは依頼をすれば、大手銀行の基本は2~3日、ネット銀行では1週間~1週間半くらいでしょう。事前審査で行う内容は、大きく分けて2本の柱があります。1つは個人の信用の評価です。1つは物件の担保価値の評価です。

必要書類はお客様の状況によって変わります。詳細の情報は「ローンの審査と必要書類」に譲ります。ご覧いただけましたら幸いです。

個人の収入評価

収入評価においおては、収入と返済が見合っているかの確認が中心となります。重要な指標は収入返済比率です。

住宅ローンは長期にわたるため、金融機関は安定性を重視します。住宅ローンではサラリーマンや公務員が評価が髙い現象が多くみられますが、これがその理由です。サラリーマンの方は原則的に前年分の収入で審査されます。自営業者の方は3期分の確定申告で審査されます。安定性を重視しますので、各年度で大きくばらつきがある場合には、慎重に判断されます。

歩合率の高い業務内容や外資系金融機関にご勤務の方々は、銀行によっては、まれに、ご収入が髙くても安定性が低いと判断される場合があります。

個人の信用調査

信用調査とはいわゆるブラックリスト調査です。住宅ローンでは、金融機関はコストをかけて、信用情報機関のデータを調べます。主なもので3団体あります。3団体とは以下の団体です。

  • JICC(日本信用情報機構。消費者金融系)
  • CIC(シーアイシー。信販・クレジットカード系)
  • JBA(全国銀行協会。銀行系)

信用調査ではこの3団体に当たるのが基本ですが、金融機関によっては2団体とするところもあります。

また、大手銀行や個人が主なターゲットの銀行では、自己破産・個人再生などの情報収集のため、「官報」の情報を丁寧に集めている金融機関もあります。新聞記事を蓄積して犯罪にまつわる情報を蓄積している銀行もあるそうです。反社会勢力の情報についても各種情報源を用いて情報を蓄積しています。警察との交流も進んでいると聞いています。

物件の担保評価

担保評価とは、マーケットで販売したときにいくらで売れるかの判断です。具体的には抵当権を実行した場合です。何年かの後、もしかしたら、将来延滞をするかもしれないことを検討しています。万万が一、延滞が頻発すると、競売に流れます。つまり、競売でいくら売れるかという予測の判断が重要です。将来の価格の判定は難しいので、現時点での評価です。この投稿時点では上昇相場なので問題にはなっていませんが、下げ相場になってくると、実勢相場から掛け目で減額して、評価額を算出する銀行もあります。

土地の権利状態も重要な調査対象です。借地権の場合は慎重に確認されます。建物の状況も重要なポイントで、気になる項目があれば、事前審査のときに報告しておくべきでしょう。既存不適格、違法性等のポイントや、告知事項などが該当します。

膨大なデータを蓄積している大手銀行・信託銀行は、蓄積データを用いて社内だけで評価をします。ネット銀行では、現状は銀行から委託された不動産鑑定会社に依頼するそうです。審査に時間がかかるネット銀行が多く、使い勝手が悪い部分もあるのですが、このプロセスに時間がかかるそうです。

その他のポイント

極めてまれにですが、関与する不動産業者で謝絶されることがあります。筆者で経験があるのが2~3社ほどの売主業者様。過去にローン詐欺まがいの行為など、銀行にとって悪意を行った売主業者の名称は情報が蓄積されています。共同仲介の相手方の業者がNGというケースもありました。金融機関は明確な理由は言わないのですが、反社会勢力か、詐欺まがいで関連ありとされる人が役員な場合に該当するNG理由とのことですので、それらのことでもNGになりえます。

事前審査の信頼性

事前審査のなかには、後日、判断が覆される事前審査もあります。同じ事前審査という表現をしても、全ての金融機関が同様の意味で「事前審査」という表現を使ってるわけではありません。事前審査という表現を用いて良いのか少し疑問の余地が残りますが、ともかく後日判断が覆される可能性がある事前審査は注意が必要です。

判断が信頼できる事前審査

大手銀行、大手地方銀行など、従来型の金融機関は基本的にの事前審査の判断を信頼できます。よほどのことがない限り、本審査で否決されることはありません。

このような事前審査は、原則として、物件資料、収入資料、個人情報の3点をセットで提出し、審査部門(保証会社)を経由して回答をします。審査自体に数日かかります。大銀行は物件の担保評価や、お客様属性と事故率の関係のデータセットが豊富なため、割と的確な判断ができます。

信頼できないタイプの事前審査

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物件資料、収入資料、個人情報の3点がセットになって行うものですから、逆に、これらの資料を提出していない事前審査は、信ぴょう性が不十分と考えてください。オンラインで、住所、職業、年収を入力するレベルの審査です。

逆に言いますと、免許証など、身分証のデータを送信すれば個人情報のデータを調べています。源泉徴収票のデータを送信すれば収入の審査をしています。物件の販売図面と謄本を送信すれば物件の担保評価を調べています。これらを送信したうえで、審査に数日をかけているものであれば、信頼できる事前審査であると言えます。

なお、不動産業者では、判断が覆る可能性がある金融機関の事前審査は認識が共有されています。判断が覆る可能性がある事前審査は、事前審査が承認されたものとして受け取られません。

たとえば、ネット銀行の事前審査では、ネット経由の申込でお客様が独自で行うタイプがあります。このタイプの事前審査は、後日、本審査で否決される可能性があります。審査と言っても収入返済比率の確認だけです。不動産業者を経由して行うものは、後日、本審査で否決される可能性が少なく、判断は信頼できます。

では何のためにやっているかというと、実態は集客目的です。審査としては、ほぼ何もしていません。ただ無理もない話で、ネット経由でくる膨大な申し込みに対し、全ての案件でコストをかけてるのは非現実的です。

ネット経由の事前審査の結果により「事前審査は通った」と認識されているお客様がいらっしゃいますが、その認識は誤りです。本審査で否決されることが多いため、不動産業者もその結果を信頼していませんので、ご注意ください。

ネット銀行だが不動産業者を経由した事前審査

一部のネット銀行では、代理店などを通して、不動産業者から募集を受ける事前審査を行っています。基本的に、不動産業者経由の事前審査では、一連の「事前審査でやること」の作業を実施しています。ネット経由の申込とことなり、業者経由の審査ならば、成約までの確率も各段に上がるので、代理店も巻き込みながら、事務量を分担しているようです。やっていることは全く違った内容です。

フラット35の事前審査

フラット35についても、本審査を前提とするのが望ましいでしょう。

以前のフラット35の事前審査はほぼ何もしていませんでした。ネット経由の事前審査と同様です。そのため、後日の本審査で否決となるケースが多発していました。

フラット35の販売業者がおっしゃるのは、「最近のフラットの事前は住宅金融支援機構でも確認しているので大丈夫です」とのこと。実務で対応している限り、そういう印象を受けます。ただ、以前は本審査で否決となるケースが多発していて、現在でも時々同様の事態が発生するため、「フラットの事前」が信頼されていないという状況もあります。

そのため、フラットの事前で売主様が応諾・契約をするかは別、というのが実情です。フラット自体はいいローンですので、少し残念かもしれません。

一部信託銀行等の事前審査と本審査

一部信託銀行等では、事前審査の判断が「基本的には」覆ることがありません。しかし、価格の値下げなどで契約条件が事前審査と異なると、審査を一からやり直しとするところがあるので、注意が必要です。この意味では「否決される事前審査」の範疇に入るかもしれません。

他の物件や他の不動産会社での事前審査の有効性

他の不動産会社で実施した事前審査は、別の物件や別の不動産会社で利用できるのでしょうか。これについては決まったルールはありません。この審査結果を活用できるか否かは、購入申込を受け付ける売主側の判断です。

事前審査の趣旨は十分な資金調達力があると信頼させることですが、審査の対象は物件も含みますので、心配性の売主は、やり直してくれと要求されるこもあります。

とはいえ、事前審査を通した実績があれば、収入と個人信用情報(ブラックリスト)には問題がないとわかりますので、購入希望者の競合が重なった時に、優先順位を上げてくれるはずです。

ちなみに、不動産業者さんの事前審査は、業者によっては内部で抱えてしまいお 客様に還元せず、通知書を出してくれない場合もあります。その場合は信頼性を確認できるエビデンスがないので、再度、事前審査をする必要が生じるかもしれません。

本審査ではなにをするの?

判断が変わらないほどしっかりと審査するなら、本審査ではなにをするの?と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。その疑問もごもっともです。売買契約の前に行いますので、実際の契約書・重要事項説明書を確認していません。聞いてないような違法建築や告知事項など、担保評価が変わることがあるかもしれません。まずはその確認です。次に公的な収入証明の書類の確認です。事前審査では性善説、本審査は性悪説で見ている考えればわかりやすいかもしれません。

ただ、書類の後日確認はするものの、形式な本審査は不要にして省力化して、聞いてないことがない限り、判断は変更しないと表明する銀行も出てきました。不動産業者経由のネット銀行ではこのような流れで、一部の大手でも対応を始めています。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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