ネット銀行の住宅ローンのメリットとデメリット

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金利の安さが定評のネット銀行の住宅ローン。メリット、デメリット、そしてデメリットを解消する方策について、実務をやっていて感じることをお伝えします。

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ネット銀行の住宅ローンとは?

ネット銀行とは、営業上最小限必要な店舗のみを有し、インターネットなどで取引を行う銀行です。口座開設をはじめ、手続きはすべてオンラインです。キャッシュカードの授受は郵送で行います。通帳はありません。ネット銀行でも、多くの銀行が住宅ローンを提供しています。

ネット銀行は、伝統的な手法の銀行とは異なるタイプの銀行です。斬新なサービスを提供する傾向があります。ただ、メリットを生かすためには、商品の特徴を把握する必要もあります。

当社の経験では、リアルの代理店を通した取り扱いがあるので、下表のうち、上の3社の利用が多くなっています。PayPay銀行はまだ対応歴がありません。

この記事を初めて書いたのは2019年ですが、そのころと比べるとやはり少しづつ変わってきた感じはします。伝統的な銀行がネット銀行のサービスを取り入れたり、またネット銀行が実店舗を通したサービスを開始したりしています。

住宅ローンを扱うネット銀行

銀行名 備考・コメント
SBI住信ネット銀行 代理店を通した実店舗のサービスあり。
ソニー銀行 代理店を通したサービスあり。ときどき審査がアグレッシブ。5年・25%ルールなし。ソニー銀行の手続きについて
auじぶん銀行 au携帯との連携で金利安く。審査基準は三菱UFJBKに近い気がする。ただし旧耐震は対応。auじぶん銀行の手続きについて
楽天銀行 金利はネット銀行の中では高めも手数料を抑えめ
イオン銀行 イオン店舗を通したサービスあり
新生銀行 担保評価からめだがそれさえクリアすれば審査はゆるやか(と言われる)
PayPay銀行 よくわからないです。

【メリット】低金利

大手銀行では公表されているものでも、りそな銀行が0.32%、みずほ銀行が0.375%、三菱UFJ銀行が0.425%と頑張っています。非公表のものはもっと頑張っています。ただ、ネット銀行の住宅ローンの金利はさらに低金利になっています。

主なネット銀行の金利

キャンペーンを除いた優遇金利で言いますと、以下のような状況です。無店舗、AI活用のスピード審査などにより低金利を実現させています。

じぶん銀行は0.289%(au携帯などの併用で1.489%まで)、住信SBIネット銀行は0.33%、ソニー銀行は0.397%、イオン銀行jは0.38%、0.42%。

無店舗営業

無店舗で営業していますので、ローン契約(金銭消費貸借契約)などはオンラインで行います。手続きの進行も・メール・電話・郵送でやります。

決済も同様です。ネット銀行の住宅ローンではオンラインで完結します。決済時に集合するのも不動産業者の店頭などとなり、時間は非常にスムーズに進みます。オンラインを利用した不動産決済については、リンク先をご覧ください。

写真は当社の例ですが、なんどかネット銀行の決済でも、関係者の皆様に足を運んでいただいたことがあります。買主様のほか、司法書士、売主が全員集合し、書類の点検を行うと、司法書士(銀行指定)が銀行に電話をすれば、資金が振り込まれます。

不動産店の例

写真は当社の例です。

【メリット】印紙なしの電子契約

来店は不要であるがゆえ、契約はオンラインによりおこないます。そのため、ローン契約書の作成・署名・捺印がありません。

書面に対する署名・捺印がないですので、印紙を貼る必要がありません。借り入れる金額により課金される印紙税(1万円、3万円、6万円など)がかからないので、じんわりとした有利さがあります。

【メリット】多様なネット銀行の団信

伝統的な銀行の団体信用生命保険(団信)は基本コース(死亡&1級高度障害)のみが無料です。それ以上のサービスは有料です。

一方、ネット銀行は多様なサービスがメリットです。金利低下の競争も、恐らく行きつくところまで行ったのでしょうか。昨今は金利上乗せなしで可能な団信の優位性を競争ポイントにしたアピールが多くなってているようです。

全疾病保障の団信をうたう銀行

たとえば、住信SBIネット銀行の「スゴ団信」、auじぶん銀行の「がん50%保障」、楽天銀行の「全疾病特約」などは条件が付きますが、住宅ローンの金利のみで、あらゆる疾病で所定の状態になった時に保障を受けることができます。銀行の母体の金融グループのサービスと連動があり実現させています。

「就労不能状態」という大前提が付き、このハードルは意外と高いのですが、ないよりは圧倒的に有利です。それに伝統的な銀行だと、同等以上のサービスを得ようとするならば、保険料を支払う必要があります。

大手銀行よりも有利な団信をうたう銀行

ソニー銀行においては、がん50団信において、ガンにより所定の状態になると、住宅ローン残高の分を50%保障します。

SBI新生銀行においては、団体信用介護保障保険を提供しています。所定の要介護状態に該当した場合に支払われる保険です。

イオン銀行においては就労不能補償保険が付帯されます。

ネット銀行の住宅ローンのデメリット

逆に、実務をやっていると、ネット銀行固有のデメリットもあると感じます。ハードルの高さなどがデメリットになります。

審査の基準が厳しい

対面が一切介在しない分、ハードルが少し高くなっていますので要注意です。ハードルのポイントは銀行にもよります。例としてあげられるのは、自己資金率、勤続年数、雇用形態、旧耐震不可などです。

7、8年くらい前の以前ですと、どのネット銀行も自己資金2割となっていましたが、いまはファミリータイプですと、そこまでは言わないようです。しかし、投資マンションにするという懸念のため、シングルの方自己資金が2~3割くらいは必要とされることもあります。

お客様自身でお手続き(不動産業者代行できない)の銀行もあり

ネット銀行のシステムではお客様が自主的に行うタイプもあります。このタイプでは、本審査完了までは不動産業者が一切関与しません。不動産業者が窓口にできないということは、書類の手配やチェックもご自身で対応しなければなりません。

不動産業者が代行したり、窓口になれるタイプならば、不動産関連の資料は不動産業者が動けますので、このあたりのサポートは楽なはずです。

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全ての作業を自分で、締め切りを守りながらやる必要があります。融通が利く売主ならよいのですが、そうでない場合、困惑することも

サービス・条件がわかりづらい

ネット銀行間の競争が激しくなっているため、金利や付帯サービスなど、キャンペーンで商品内容が毎月のように変更されます。結果として商品の内容がよくわからないことがあげられます。「書いてあることを読め」というスタンスとも言えますので、利用者の高いリテラシーが求められます。

インターネット上では昔の情報が残っていたままであったり、販売者間での相違があったりすることで、お客様の認識と、金融機関や不動産業者の説明が食い違っている現象が発生しえます。

お恥ずかしながら筆者も案内ミスをしたことがあり、銀行本体や正規代理店など、複数の一次情報をしっかり把握すべく、気を付けるようになりました。

手続きの時間を要する

郵送やメールでのやり取りが基本ですので、手続きの不備があると、送付の往復で時間が過ぎていきます。これは新規で使うネット住宅ローンのハードルの一つです。審査のための人員の体制も発展途上であるため、案件が多い春・秋の時期は、スピードが遅くなる傾向があります。

また、本審査はさまざまなプロセスが重なっていきますので、手続きが遅くなります。

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ネット銀行の手続きはオンラインと郵送を用いるため意外と時間がかかる

抹消の手続きに手間を要する

将来の売却の時の話ですが、売却に伴う一括返済したときの抵当権の抹消書類の受領で、ネット銀行では特定の場所に行かねばならない場合があります。東京や大阪などのネット銀行の支店です。これらが決済場所から遠隔地の場合には、そのままだと当日に抹消書類の受領ができなくなりますので、全国対応が可能な司法書士事務所に依頼する必要が出てきます。

当社の売却サービスでは全国対応の司法書士も知っていますが、準備が必要ですので、事前におおせください。

対応できない物件がある

多くのネット銀行では借地権の対応はしていません。同様に、多くの銀行は、築年数は65年までに完済しなければならず、築古の物件では35年の利用ができないことがあります。なお、一部の銀行では対応している銀行もあります。

事前審査の信頼性が低い

お客様の手で応募して行うネット銀行の「事前審査」は本審査で覆りることがあります。実際には年収と借入の比率を自己申告により計算でみているだけで、信用情報機関にブラックリスト情報の確認などは一切していません。

審査というより実態は単なる集客のツールといえます。なので、不動産業者の側も、契約を受け付けることができません。

しかし代理店等の人の手を介した審査であれば、信頼されます。主なネット銀行は何かしらの代理店を通すことができるので、不動産業者ルートでの紹介がいいと断言できます。

保証料タイプを選択できない

大手銀行では保証料タイプというものを選択できます。実は、保証料タイプは、借入期間が短いと、保証料が安くなるという特徴があります。借入期間が短かい場合などでは、保証料のほうが安くなることもあります。

保証料は、例えば15年だと借入額の1.2%くらいです。10年だと借入額の0.8%くらいです。これが影響し、期間が短い住宅ローンでは保証料タイプのほうが総コストが安くなりますので、伝統的な銀行のほうが有利な場合があります。

これについては、「住宅ローンの保証料型と手数料型のメリット・デメリット」という記事で詳しくご案内しています。

ドライな部分も

「他行口座からの資金移動無料」「ATM利用料無料」等のサービスの展開がありますが、未来永劫続くかどうかは不明です。クレバーでドライな分、サービスを見限りスピードも速いです。たとえば、新生銀行では、2018年10月7日より引き出し手数料は変わりました。

https://www.shinseibank.com/info/news180423_atm.html

【デメリット】施策の頻繁な変更と金利の上昇リスク

施策変更リスク

大手銀行は「社会的なインフラである」という建前が大きく意識しているので、施策の変更には非常に慎重です。

ネット銀行では身軽な側面があり、施策の変更は借り入れ後も生じる場合があります。新生銀行では引き落とし手数料の変更をしたりしたことを見たことがあります。令和6年の住信SBIの基準金利のアップは記憶に新しいところです。

金利上昇時のリスク

全期間固定金利では、一般的に資金調達力のある大銀行有利で、メガバンクが優勢です。ネット銀行では、全期間固定にもかかわらず、大変動が発生すれば、「やむを得ず金利を変更する」という規定がある銀行もあります。

ソニー銀行などでは「125%5年ルール」がないとされています。

ネット銀行代理店によるサービス

代理店を経由してサービスを展開するネット銀行もある

一部のネット銀行では、貸金業の免許をもった銀行代理店を窓口に不動産業者とのコミュニケーションチャネルを持つ銀行があります。

人間が介在するので、デメリットのいくつかは解消されます。

2021年1月現在では、SBI住信ネット銀行、じぶん銀行、ソニー銀行、新生銀行などが該当します。イオンのモール内に出店しているイオン銀行もそのタイプです。

代理店経由のネット銀行

代理店経由の申し込みを受け付けるネット銀行の例

人間によるコミュニケーション

画一的な審査基準は変わらないのですが、証明書では伝わらない事項について、「報告書」「稟議書」等の事項で審査部門へ伝えることが可能ですので、有利な運用をすることができます。

また、書類の手配やチェックは代理店の担当者が行いますので、精度があがります。代理店によっては、「お住まい」「ご近所」「ご勤務先」「不動産業者の店頭」などに出向いてくれますので、負担も軽減されます。実際に当社でお願いしているネット銀行の代理店は熱心な人が多く、審査の内容にもすぐに問い合わせることができますので、リアリティを感じてもらうことができます。

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意外と人を介したほうがいいということも。審査の急所を教えてくれたりとか・・・

スケジュールが早い

ローン審査部門を代理店サポートすることで、一体で作業を行うことができます。急ぎなので、案件をねじ込むなどの対応ができる場合もあります。そのため、ネット経由より代理店経由のほうが若干早くなります。

柔軟な審査対応

オンライン経由だと画一性がある審査では柔軟な対応ができなませんが、代理店経由だと、審査の基準は柔軟に運用されることもあります。たとえば勤続年数については表では半年となっていても、実態は3か月で儲けてくれる場合もあります。このケースですと、お客様の属性や背景を担当者が確認することで、アピールに加えることができるからです。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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