遠方から不動産の購入や売却は可能か?

結論から申し上げると、マンションや土地の契約や決済を、遠隔地から現地に行かずに実施することは、制度上は可能です。当社でも対応事例があります。業務を行うにあたっても、オンラインや通信で相当のことは可能です。

ただ、日本の法律や実務では、関係者が対面で行うことが原則としたシステム設計となっています。

関係者の信頼性を十分に確認できない状況では、出席の上で業務を進めるべきかもしれません。

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コロナウイルスの蔓延で広域での移動を控えるように呼びかけられた2020年でした。これにかかわらず、以前から、距離の問題や手続きの負担もあって、首都圏でマンションや一軒家など取引したいと思う方々が、何度も遠方には出向きたくないという要望はありました。

契約や決済において、現地の会場に出向くことなく、不動産の売買はできるのでしょうか。結論としては可能です。当社の例に即して説明します。

登場する用語などについて

このページをご理解いただくのに必要な用語を解説します。

契約
契約とは売買の約束をすることですが、記名捺印と手付の交付により成立します。
決済
決済とは契約に基づき、残代金を支払い権利を引き渡すことです。
重要事項説明
重要事項説明とは契約の前に行う物件の説明です。不動産業者が関与する契約では、契約が有効に成立するには、重要事項説明は必ず実施しなければなりません。
司法書士
司法書士は決済に立ち会って、書類などを確認や認証を通して、売主と買主の双方の権利と義務(お金の支払い、名義の引渡し)の履行の適正な実施します。いわば法務局の代理人的な立場で登記手続きを行うことが役割です。

遠方の不動産購入

売買契約

不動産購入の売買契約では対面が必須です。正確には売買契約の行うときに実施する重要事項説明が対面が必須です。そこで契約締結では、不動産の資格者である宅地建物取引士が購入契約に出向くことになります。

賃貸住宅の契約ではオンラインによる重要事項説明(IT重説)が認められるようになりましたが、売買では実証実験の最中で、まだ法令では認められていません。重要事項説明の内容を理解しているかどうかを確認しながら進めるという趣旨だと思いますので、このような規制も、一定の合理性はあるように思います。また、いづれ認められるようになると思いますが、いい物件は足が速い場合もあるので、悠長に時間をとっていることはできないことは、想定に入れる必要があります。

なお、当社が仲介手数料無料の対象としている物件、つまりリノベーション住宅や新築一戸建てなど、宅地建物取引業者が売主の物件は原則としてお客様の自宅や勤務先で契約を締結することになると思います。

これは、宅建業法37条の2のクーリングオフ規定により、宅地建物取引業者が売主の物件は、契約締結の場所に制限があるためです。制限以外の場所で、契約締結を行うと、契約締結日から数えて8日後まで、売買契約の締結を解除できるという規定があります。この解除権により、売主の立場が若干不安定になるためです。

オンラインでの説明

重要事項説明をオンラインで説明をすることはまだ容認されていませんが、深い理解のための、事前にオンラインで丁寧に説明することであれば有効に活用できるでしょう。東京や大大都市から地方エリアに出向くことは、移動でも時間がかかりますので、契約締結の当日は忙しくなくなるはずです。このような対処は有効だと思います。

登記手続きと本人確認

司法書士が買主に対する本人確認・意思確認は直接面談が原則ですが、必ず直接面談しなければならないと法律で決められているわけではありません。何らかの方法で、買主が本人であること、登記申請の意思があることを確認出来れば良いのです。

そこで、遠隔地に居住する人の本人確認を行う場合、買主の本人確認、委任状のやり取り、必要書類の取り付けを「本人限定受取郵便」を利用して、意思確認を電話などで行こなうことで対処する方法があります。本人限定受取郵便とは、郵便物等に記載された名あて人または差出人が指定した一人に限り、郵便局が本人確認をしたうえで、郵便物等を渡すものです。この方法であれば買主は遠隔地へ出張せずに本人確認が対応可能です。つまり遠隔地にいたまま決済の対応が可能です。これを、売主側が指名もしくは了承した司法書士が行います。

当社で対応したケースですと東北地方にお住まいのお客様が単独名義で土地を買いたいと言ったケースや、共有名義でのご購入者の一人が体の具合が悪くて移動ができないので、遠隔で行ったケースがありました。

ただ、本人確認と意思確認は司法書士の判断において行います。万が一、本人確認や意思確認に不備があった場合に全責任を負うのは司法書士となるため、司法書士が、依頼者に会わずに対応することを了承しなければ、対応できません。

決済と送金

決済時の送金は遠隔地でなくても振り込みで行うのが通例ですので、これは通常と同じです。決済は代金を払い、権利を受け取る手続きです。そのため、空間が離れているというだけで、時間は同じく会するべきです。

遠隔地同士ですので着金確認は確実に行わねばなりません。そのため振込送金の「至急扱い」は必須です。オンラインの環境が整っているのであれば自宅からでもできるでしょう。

決済は司法書士が真の主役です。司法書士が書類の確認を行い、手続きの安全性を確認します。送金はあくまでも書類が確認できた時点で行うべきで、その前にお金を動かすのは危険です。手続書類が整ったことを確認する司法書士による発声を聞いてから、買主側の送金は行うべきと言えます。

一括決済(一発決済)

マンションにせよ一戸建てにせよ、不動産は大きな買い物ですので、現物を一度も見ないで買うこと少ないと思います。物件を買うことが確定的でならば、事前に打ち合わせをして、遠隔地の物件を購入される方は、おそらく現金での購入も比較的多いと思いますが、現金での購入ならば、全て同日に行うことも可能です。

契約締結、売買代金全額の支払い、物件の引き渡し、所有権の移転登記手続きまでを同じ日に行うのです。当社が対応したケースではこの派生バージョンでは当社も対応したことがあります。京都から引っ越すお客様が、夕方に契約を行い、翌日朝決済をするという形で実施しました。

一括決済は不動産業者などプロ筋の買主がやる売買契約で行われるものです。売買契約では重要事項説明などの準備がありますので、会ったことのないお客さんから要望されても、対応はしづらい手法ですし、多くの不動産業者は相手にしないかもしれません。

しかしご購入の事情が明確で不動産業者とお客さんの信頼関係があれば、可能とも言えます。一度にすべてを終わらせるので、「一発決済」などとも言われています。

遠隔地の不動産売却

多くの不動産情報サイトを見ましたが、遠隔地の物件売却も、「持ち回り契約」をすれば可能と書いてあります。ただ、これだけだと、少しのんきな説明かもしれません。実は、心配すべき事項がもっと先にあります。

細々とした業務への対応

売却において、販売中には内見に対応するため、室内の簡易清掃も必要です。決済時(後述)には、鍵の引き渡し・残置物の処分があります。遠隔地の売却でも、このような細々とした業務があります。現地に行かずに売却を進めるならば、このような細々とした雑務を快く引き受けてくれる仲介会社を選択する必要があります。

当社の売却受託では業務一環として引き受けていますし、この辺りは、小さな不動産業者の方が頼りになるかもしれません。大手仲介業者では物件数も多いですし、コンプライアンス的にも、面倒な業務は引き受けません。そもそも、囲い込みのリスクもありますので、目が届きにくい遠隔地の物件の売却は、大手仲介業者を売却委託先に選定すると、融通が利かず、ドツボにはまることになるかもしれません。

代理人の選定

「契約」までであれば代理人はおらずとも進めることは可能だと思います。ただ、契約の段階でも代理人がいれば機動的な対応が可能です。また、「決済」の段階となると代理人の選任の重要度が上がります。そのため、売却においてはできれば物件現地に近い代理人を選任できるとよいでしょう。

代理人は信頼できる人であれば誰でもいいです。実務上は委任状に印鑑証明を添えてご本人の意向を明示します。これまでの経験では海外にお住まいのリタイア世代の方が、サラリーマン時代の同僚である親友を代理人にしたというケースもありました。

売却の契約の進め方

契約締結においては代理人を指名しなくてもスムーズに進めることは可能です。ただ、代理人を選任して売買契約の時点から関与してもらえれば、慌ただしく進める必要もなく、より安心です。

売却の場合は売主に対して重要事項説明を実施する義務が宅地建物取引業者に課されていませんが、法令の趣旨からせれば実施する方が良いと考える業者が多いと思います。

そこで売却の場合の契約においても行列の購入と同様に宅地建物取引士が出向いて契約をすることになるでしょう。

登記手続きと本人確認

売却においても購入等同様に、書類のやり取りは「本人限定受取郵便」を利用して進めることは可能です。やむを得ず遠隔地で行う場合、買主の本人確認、委任状のやり取り、必要書類の取り付けを実施します。意思確認や打ち合わせは電話などで行こなうことで対処します。この方法であれば買主は遠隔地へ出張せずに決済出来ます。

司法書士が委任者に対する本人確認・意思確認は直接面談が原則ですが、必ず直接面談しなければならないと法律で決められているわけではありません。何らかの方法で、買主が本人であること、登記申請の意思があることを確認出来れば良いのです。

ただ、司法書士の判断において本人確認と意思確認をします。万が一、本人確認や意思確認に不備があった場合に全責任を負うのは司法書士ですから、司法書士が依頼者に会わずに対応することを了承しなければ、対応できません。

売却決済と代理人

決済のときに代理人を指名する流れがスムーズなのは、決済日において、売買代金の支払いと所有権の名義変更を同時履行するため、権利証(登記識別情報通知書)は手渡しすることが理想だからです。

支払いを受ける前に権利証・印鑑証明・実印を押印した書類を渡すと勝手に登記をされて逃亡されてもいけません。したがって、権利証(登記識別情報通知書)は司法書士に対する手渡しがベストです。このように、同時履行せず、書類の引渡しを先行すれば売主にリスクがあります。

逆に、お金の支払いを先行して、書類の引渡しを後でも良いとすれば、買主にリスクがあります。同時履行しない場合の買主にとって手痛いリスクは二重売買です。所有者として買主の権利を確定させるには登記が必要ですが、手続き上、この登記の移転に権利証(登記識別情報通知書)・売主の印鑑証明・実印を押印した書類が必要となります。悪意の売主だとすれば、この書類を悪用して、別の買主に譲渡をしてしまうことも可能です。これが二重売買です。

決済と権利証(登記識別情報通知書)については、以前、当社サイトの読者からご質問があったことがあり、ユーチューブにて動画をアップロードしていますので、よろしければご覧ください。

代理人を選定できない場合

代理人を選定できない場合にはどうしたらいいでしょう。要は、権利証(登記識別情報通知書)・売主の印鑑証明・実印を押印した書類を決済日前に渡すことで悪用を防ぐことができればよいわけです。当社では経験したことがない手法ですが理屈上では以下のようなものが考えられます。

買主の指定する司法書士に移転登記を任せる

司法書士を買主の指定する者に対して委任する方法も検討できるでしょう。売却を委託先が足となり頭となってくれて信頼できる不動産業者で、この業者が買主指定の司法書士と結託がないことが確認できることが条件です。3種類の書類を分散して預けることで、売却に要する書類の悪用を防ぎます。つまり司法書士に登記手続きと本人確認の書類を送付して、権利証(登記識別情報通知書)は、売主が売却を委託している不動産業者に預けます。不動産業者に預けずとも、決済現場に移動できる人に任せればいいので、親戚、友人でもよいと思います。

自身が信頼する司法書士で出張が可能な先生に任せる

自身が信頼する司法書士に全て委託する方法が可能なら、それも検討できるでしょう。3種類の書類を分散して預けることで、売却に要する書類の悪用を防ぐことは必要ですから、この場合ならば、権利証と実印を押印した書類を司法書士に預け、印鑑証明は売主が売却を委託している不動産業者に預けるのがいいかもしれません。不動産業者に預けずとも、決済現場に移動できる人に任せればいいので、親戚、友人でもよいのは上記と同様です。

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