不動産の囲い込み

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囲い込みとは売却の依頼を受けた不動産業者が、他の不動産業者からの買主紹介を制限することです。

元付業者の都合よく両手の取引ができるまでダラダラと販売しているだけで、お買い得などとは関係ありません。

売主をうまく誘導することができれば、仲介業者はノーリスクで12%の利益を取るれる場合もあります。

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不動産の囲い込みとは

囲い込みとは、売却の委託を受けた仲介業者が、他の仲介業者からの一切の客付け・紹介を拒否する行為です。「他の商談が入ってる」「売主が病気中で内見できない」など、ウソの理由を述べて、売主の利益を害します。

囲い込みの基本構図

業界規則では、囲い込みは禁止されていますが、罰則がなく、証拠が残らないので、大手仲介業者も暗黙の了解でやっていると言われています。うまく売れれば問題はないのかもしれませんが、極端にスムーズに売れる可能性を下げますので、背信・背任行為であるといえます。当社の売却仲介では囲い込みをしない方針ではいます。

囲い込みの弊害

意地悪な不動産業者

むろん、囲い込みがあっても、早く売れれば売主には問題はないのですが、販売ルートを制限して極端に門戸が狭くしています。マスメディアなどで紹介されるような、極めて高人気の一部のプレミア物件でもない限りは、たいていの場合、囲い込みにより売却活動は長期化します。

意図的に売れる流れを遮れば、買取業者などに不当に買いたたかれる場合もあります

担当者の人柄や良心はあまり関係ありません。会社や営業所が囲い込みをしている場合があるからです。

不動産業者が売却にかかる期間は平均8か月※というレポートもありますし、物件の囲い込みは大手の方が多いという報告もあります。

マル秘・未公開・買い得物件ではない

囲い込みをされた物件はお買い得と考えている買主さんもいるようですが、それは誤りです。囲い込み業者はどんな物件でも囲い込みます。そもそも、お買い得な物件はちょっと価格交渉をして、専任返しの物件になります。

そもそも、仲介業務には仕入れ原価というものが存在しないので、売れても売れなくてもいいのです。気に入っていただく「1客」を見つければいいわけです。売主本人と違い、資本がある大規模業者となるほど、じっくりと待つことが可能です。

大手と囲い込みの関係

囲い込みは一部の悪徳業者とお思いになるかもしれませんが、大手や地場の著名業者でも例外ではありません。しかし一般顧客は大手だから安心と思ってしまいます。しかし有力な仲介会社で「囲い込みをしない」と明言する会社は存在しないことは、頭の片隅においておくべきでしょう。

もちろん、表向きは囲い込みをしているとは言いません。規模のある会社のほうが数字に追われることが普通ですから、常態化しているというのが、不動産業者間の一般通念です。囲い込みに罰則が科されない限り、担当者・支店の裁量で行っていることが実態で、なくなることはないと思います。

そもそも、仲介業者は仕入れ原価がないので、大手ほど、両手で楽に売れる金額までじっくりと待つことが可能です。

以下は、週間ダイヤモンドと言う経済紙の記事です。不動産業界では常識でしたが、一般の消費者の方には良く知られていない実態がありました。大変よくレポートしています。下記あるような記事を見る限り、まだその傾向は続くと思います。

あのデータが表に出たら不動産業界は大変なことになるだろう。ある不動産会社の幹部がそうささやくデータが、一部の業界関係者の間に出回り始めている。

「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」よりhttp://diamond.jp/articles/-/69998

大手不動産仲介会社は、「両手取引」が蔓延?!

http://diamond.jp/articles/-/148998

囲い込みを行う目的

囲い込みを行うのは、効率よく仲介料を巻き上げるためです。まず第一が6%の手数料ですが、囲い込まれた物件がうまくハマれば12%の手数料も狙えまます。専任返しの物件となるなど、収益を支える車の両輪となっていると言えます。

不動産の囲い込み

両手仲介で手数料率6%ゲット

大手は両手仲介がマストの場合があります。片手仲介だと稟議が必要で、厳しく詰められるそうです。

そこで、まず囲い込みの第1目標は、両手取引で手数料率6%をゲットすることです。不動産業者は売主と買主双方に関与すれば、それぞれから3%の手数料が取れますが、他の不動産業者から買主さんを紹介をうけると、売主からだけの3%となり、非常に具合が悪い。つ両手ならば売り買い合計6%%取れるわけですから、このような事態は売主側の業者には望ましくありません。そこで、物件を「囲い込む」動機が働きます。

このようなケースは意外と日常的です。

売却の委任さえ取っておけば、売れれば必ず手数料が入ります。とくに、仲介業者は仕入原価があるわけではないので、物件をたくさん抱えておけばいいのです。「それならば!」と不動産業者は考えます。買主さんも自分で見つけ、その買主さんからも3%の媒介手数料を手にすれば合計6%の手数料となります。これを両手といいます。

専任返しで手数料率12%

お人よしの売主に出会えれば、専任返しを活用した4回転取引も狙うことができます。もともとの売主から買取業者、買取業者から消費者への2階の取引で6%づつ、合計12%です。この一連の流れを「専任返し」といいます。囲い込みの究極の着地点はここにあります。

この場合はどうするかというと、買取業者にいったん落とし込むことです。そのために、まず売れないという現象を演出することで売主さんを不安にさせます。売れない物件をお持ちの売主さんは、見学が来ないので、当然不安になります。その段階で、買取(下取り)業者を紹介し、契約を成立させます。

一番気の毒なのは売主さんとも言えます。

売却先の選定を、「買取業者からの再販売委託」に限定して進めるので、事実上、仲介業者が決定権者です。中間の仲介業者は、さしずめ問屋のようなものですので、『卸す』等とも言います。

集客のための囲い込み

マーケットに出始めの新規物件であれば効率よく集客ができます。とりあえず囲い込み物件で集客して、別の物件に振り替えるということをやります。そのためにも囲い込みは好都合です。

買主にとっての本当のこわさ

不動産取引における囲い込み行為は、売主の利益を度外視して、仲介業者のメリットを最大限に追及する行為です。では、購入者側にはいくつかのデメリットが存在しないのでしょうか?

疑わしき良心

買主にとって、囲い込みの怖さ、問題は、このような囲い込み行為を行う不動産業者の良心性が疑わしいことです。何を信頼したらいいか、わからなくなることです。

売主の利益を踏みにじり、業者の利益のみを追求する者が、果たして購入者だけは、利益を守ってくれるのか、利益を第一に考えてくれるのか。売主に対して気持ちを踏みにじるような行為をしておきながら、購入者に対してのみ誠実であり続けられるでしょうか。そのようなことは難しいと思われます。

買主が親戚や友達でもない限り、売主の利益を無視する人物が、買主には親切であり続けられるとは考えにくいからです。売主の気持ちを踏みにじる業者が、購入者に対してのみ誠実でいられる保証はありません。ここに、囲い込み業者と付き合うリスクの本質があります。

触らぬ神に祟りなし

むろん、囲い込みと物件のよしあしとはm一切関係ありません。それでも、そうした業者と付き合うリスクは避けた方が賢明です。たとえ魅力的な物件であっても、そこに携わる業者の姿勢が信用できなければ、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなるのです。

不動産取引に関する知識や経験が十分にある方であれば、囲い込まれた物件の中から良質なものを見極められるかもしれません。ただ、大半の人は、良質な物件か悪質なものか判断がつきにくいでしょう。ある程度経験がものをいう世界でもあります。不動産や建設に携わる人でない限り、物件を審査する能力を持つ人は多くありません。

そういった場合、「触らぬ神に祟りなし」が賢明な判断となります。売主の利益を徹底的に踏みにじる人であれば、買主に対して、本当のこと言っているのか断定できません。それながら、信頼できる業者を探す方が無難です。

一見、魅力的な条件で購入できるように見えても、説明がごまかしなどに満たされたものであれば、魅力的な物件と断定はできません。

囲い込みの手法

レインズというネットワークがあります。物件情報を拡散させることを目的に作られた不動産業者間の物件情報公開システムです。囲い込みはこのレインズをだましたり、他の業者からの客付け照会にノラリクラリと対応することで、進めます。演技力がいります。

売り止め

ポピュラーな物件を囲い込み手法は「売り止め」です。売り止めとは、販売を一時中断している状態のことです。

他の業者から買主さんご紹介の問い合わせが入っても、「売り止めです」とか「お話が入ってます!」など、実際にはまったく話がなくても、お問い合わせを断ります。物件情報は公開していながら、他社は客付けができないという状況になります。形式的には法令を守りながらも、

もちろん、本当の理由 で売り止めの場合もありますが、本当のところは外部からは誰もわかりません。一般人である売主個人なら、絶対にわかりません。だから「売り止め」という手法が通用するわけですね。

一般媒介による囲い込み

宅地建物取引業法の定めで、専任媒介、専属媒介で売却委託を受けると、仲介業業者はレインズへ掲載を義務づけられています。ただ、物件を囲い込みたい業者にとっては、手間でしかありません。

そこで最近多くなってきたのが、一般媒介による囲い込みです。一般媒介ではレインズ登録の義務がありません。一般とは一般的に誰でも任せるという意味で、売主側の不動産業者にも制限がありません。

しかし、業者が物件を完全にコントロールするにあたり、もっとも面倒がない方法は、レインズに売却受託をした物件の概要を掲載しないことです。他の業者からの紹介コールは一切なくなりますので、手間は半減です。合法的に物件を売り止めにするには、一般媒介で受けることのため、あえて一般媒介のみで受け付けるというテクニックもあります。

紹介される可能性が減るリスクをお知らせすれば問題ないと思いますが、知らせないとかなり問題かもしれません。

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なお、これについては当社でも、お客様の承諾のもと実施している場合があります。あえて客付けを受けないことにより、売主の仲介手数料無料ができるからです。

巧妙化する囲い込みテクニック

囲い込みの手法も少し巧妙になってきて、最近では、とりあえず一言目には「公開中」「物件紹介可能」と言われるのですが、いざ内見を依頼すると、ノラリクラリとかわされて、事実上内見に応じないことも多くなりました。

囲い込みのテクニックには以下のようなものがあると思います。バレバレなのに迫真の演技を聞かされると、たまに笑ってしまうこともあります(本当に)。

引っ越し前・クリーニング前・リフォーム前は内見不可
もっともらしい言い訳ですが、売主さんの指示ではなく、業者の言い訳の場合も多いです。このやり方なら、1か月~3か月は囲い込みが可能です。
図面作成中
詳細の情報を公開しないことで、他社には紹介をさせないという方法です。スーモに間取り図は載っているのに販売図面を紹介できないと言われtら、完全ビンゴです。
売主が長期不在
「売主が実家に帰っています」「長期不在です」「海外に出張しています」などの言い訳。後述のコロナとの合わせ技もあります。
内見方法は担当者じゃないとわからない/担当者が外出中/
鍵の受け渡し方法、内見の都合の良い時間帯についての質問をノラリクラリかわします。
担当者が外出中とは、売主担当者と一向に連絡が取れないようにすることです。
コロナ関連
「売主さんが濃厚接触者の疑いがあって内見をストップしています」などは、タイムリーな手法ですね。

昔であれば、電話をすればすぐ「お話が入っています」と答えてくれて、逆に楽でした。しかし、いまは囲い込みの有無は、コミュニケーションをしながら、少しづつ感触を確かめていくものとなっています。お客様に対する囲い込みの報告も、状況に基づく可能性として報告しています。

最近の囲い込みの実態がこのように巧妙になってきた理由は、一時期、小さいながらも社会問題となったため、2016年からはコンピュータシステムが改良されて、売却依頼主はレインズにおける売却ステータスを閲覧できるようになったためです。筆者もステータス閲覧制度ができればいくらかかわるのかなと思いましたが、あまり関係ありませんでした。

意図しない囲い込み

囲い込みをする意図がないのに、売却受託をする業者の対応により、囲い込みしてしまう場合があります。十分な検討資料を提供せず、実質的に検討をさせない場合です。販売図面には書ききれない詳細の情報のことを不動産業の用語では、一件資料とも言います。長期修繕計画、課税の情報、建築確認の情報、管理の状況などが該当します。

担当者の調査スキル不足だけでなく、担当者が忙しすぎたりして情報の提供がスムーズにいかないことでも起こる現象です。したがって、このようなことは大手の業者でも起こりえます。

本来、売却側の業者がシステム的に対応すればできるのですが、意図的に未整備だったりすることであるようです。当社の場合は自社サイト内に業者専用のページを構築して、スムーズな情報提供に備えています。不動産テック企業を活用することなどでも、対応できます。

投函チラシに「売り物件募集」のチラシが多い理由

ご自宅に投函される不動産チラシのうち、「売却物件募集」のチラシが多いことにお気づきでしょうか? 投函チラシに売り物件募集が多い理由にて、その説明しています。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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