引渡し猶予

「引渡し猶予」のサムネイル

「引渡し猶予」とは、決済で代金は受領し権利証は引き渡すものの、鍵の交付を後日とし、売主が買替え先の物件に引っ越すまでの所定の期間の余裕を与えるということです。

売主が買い替えを行おうとするとき、売却金をもって返済を行う場合に条件とされる場合があります。

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引渡し猶予とは?

引渡し猶予とは、売買物件の売主が、現実の明け渡しを待ってもらうことです。売主は入金を先に受け入れて返済ができ、かつ購入のローン受け入れも可能となります。

引渡し猶予の条件が成立すれば、売主は仮移転先の賃貸借など、手配が1つ不要になります。

引渡し猶予が必要となる背景

買替先の売主をA、買替を計画している人をB(Aの物件の買主であり、Cへの売主でもある)、Bの物件の買主(新規の買主)をCとします。

BがあらたにA所有の物件を購入するため、Bは同時に2件の住宅ローンを借入できないため、Bが所有する物件についている住宅ローンの抵当権の抹消を、先行して実施すべき場合があります。Bは、自らの住宅ローンの返済にあたり、Cからの代金を当てます。その後、Aの物件の取得と住宅ローンの借入を行います。Bは直ちに転居して、Cにに物件を明け渡します。

あるいは、BによるAへの支払いに対して、Cからの代金をあてる場合でも、引渡し猶予が要望される場合もあります。

新規の買主Cと、Bが取得する物件の売主Aは、無関係です。お金の流れ、モノの流れは下の図表のようになります。新規の買主Cにとって相手となる当事者はBですが、AB間の取引が無事に完了することを前提としています。

引渡猶予の特約を締結する背景には、買替人の資金需要があることです。お金を先に払うが引渡が後になるという、少し特殊な取引です。占有は不動産の重要なテーマですから、これは一筆必要な内容です。

「引渡猶予」での買主の注意点

買主(図表のCの立場)として、物件のチラシの中で「引渡し猶予」の文言を見たときは、いくつかの注意点があります。

猶予期間

日程の設定はおおむね代金決済から1~2週間という設定が多いようですが、お金が先払いになるということです。Cが鍵の引渡しを猶予することは、その期間だけ無料で占有を認めることになります。

危険負担

引渡前の期間の危険負担(物件の損壊)をどうするかという点。物件が壊れた、欠陥が生じたなどが大きなテーマになります。1週間の間に欠陥が生きなる出ることは少なく、滅多に心配なことはないのですが、油断をしてる部分がトラブルになるかもしれません。通常の契約では代金交付から危険負担が移りますが、占有期間中の事件・事故などは占有者に負担を負わせるのが妥当かもしれませんね。この問題に対する取り決めも必要です。

買い替え特約

Cとして買い受ける場合、AB間の売買契約の契約キャンセルについて、「買替特約」の有無に注意しましょう。これは売主の買替先の購入契約(AB間の売買契約)で、何らかの理由により解除となった場合は、BC間の売買契約も解約するという内容です。

もちろん、買主としてのB(BCの売主ですが、同時にAB間の買主でもあります)の対応に落ち度・責任がある場合、責任を負わなければならない場合は除きますが、ほとんどはBにも不可抗力でのキャンセルです。契約書どおりであれば、買主としてはあきらめなければならないケースとなるようです。

ただ、上記のような事情からCも当事者と言えますので、最低でもBの買替活動の状況などは、交渉の詰めの段階までには確認すべきといえます。

もしご自身が買替人の場合

買い替え人(図表のBの立場)として引渡し猶予を考えねばならない場合には注意点があります。

買い替えによる猶予の希望

もしご自身が買替人(BC間の売主で同時にAB間の買主)である場合は、売却の間口を狭くする可能性が若干ががりますが、仲介業者に引渡し猶予の希望があれば、しっかりと言ってください。

できる営業マンであれば、あらかじめトラブルになりそうなことを予測して言ってくれることもありますが、あらかじめ伝えないと、対応してくれないかもしれません。昨今の個人情報重視の流れから、立ち入ったことには踏み込まないからかもしれません。あるいは、売却で面倒が一つ増えて、不利になりことを恐れ、聞かれていないことは何も言わないだけかもしれません。

契約後だと対応できないことも

当社でも購入の相談として受けたお客様で、買い替えによる引渡し猶予の商談を買主Cが承認してくれたケースもありますが、行き場がなくって困惑しているいるお客様もいました。

契約に明記できてなければ、一時的な賃貸など、仮住まいとなる場所が必要となるでしょう。引渡し猶予を承認してくないと、ドタバタしてしまい苦境になります。

段取り力のある業者に見極め

逆に言うと、このポイントを詰めておく商談をすることができる営業マンは、お客様のために先読みをする力がある担当者です。売主が適切な判断をできるよう情報を提供できるか、売主の利益となるよう提言ができるか、相談先の不動産業者の見極めの材料にもなるかもしれません。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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