なぜ一般媒介による売却はダメなのか(デメリット)

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「一般媒介ではどの業者も責任を持って対処しない」と言われることがあります。これは各業者が物件に対して無関心である状態をいいます。気をきかせてくなかったり、アドバイスが提供されなくなります。

一般媒介ならば各業者が競って売却するので高く売れると想定しているのであれば想定ちがいかもしれません。安くもない物件を売るのに各不動産会社が競争してくれるというというのは、いささかナイーブかもしれません。むしろ「話を聞かない難しいオーナーさんかな?」というまなざしで見られます。

あえて一般媒介契約にして、レインズへの登録義務を外すという手法を用いて囲い込みをしてしまうテクニックがあります。

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誰も頑張らない

仲介業者と売却の相談をしていると「一般媒介ではどの業者も責任を持って対処しない」と言われることがあると思います。もう少しかみ砕くと、気をきかせてくなかったり、アドバイスが提供されないことを指します。しかし具体的にはどのようなことなのでしょうか。

気をきかせてくれない

下の写真は当社が専任で販売をしている物件のものです。カーテンを設置してあるのですが、これは当社により販売対策として設置しています。理由は日差しを和らげるためと、室内外の目線の衝突を避けるためです。

室内230929

もちろん、専任を委任していても気を聞かせてくれない不動産業者は存在しますが、一般媒介の各業者が気をきかせてくれることは決してありません。

アドバイスがもらえない

下の写真は、売却をしないかというご相談で、単独で空室を訪問して気づいたことを撮影したものです。一般媒介として販売していた物件でしたが、洗面台の下部キャビネットで、底の部分の板が破損していることがわかりますでしょうか?

底板が破損している

一般媒介でもう2~3か月販売している物件だったのですが、ずっと手直しされていませんでした。オーナーもお気づきになることはありませんでした。つまり、筆者が訪問して報告するまで、誰もこれに気づくことはありません。

気がづけば修理をしたり、価格で調整したりなど、対処をすることはできると思います。しかし、「一般媒介が無責任」とは、どの業者もからも言われると思いますが、誰もが何も無関心である・・・実態としてはこういうことなのです。

なにも調べない

一般媒介での売却を依頼すれば、依頼された側の業者が成約に到達できる確率は、「1/業者の数」です。すなわち業者の数が増えるに従い、確率は下がります。

この結果生じる現象としては、実際に体験したこととして、各関与業者が行う一件資料の提供の調査が甘くなる現象が生じます。すなわち、新旧耐震の別、積立金残高、長期修繕計画、固定資産税の額、駐車場の台数など、ありとあらゆる情報がありまいとなります。

これ等の情報は、最近は物価の高騰の影響もあると思いますが、調べるにも費用は数万円となります。その結果、業者としては、「あまり細かい質問をしない買主が出てくるまで待とう」という心理になります。つまり、普通の買主の要求には答えることはできません。

変わり者と思われる

一般媒介で売却を依頼すれば各業者が競ってくれると思い込みがあるかもしれませんが、そのようなことはなく、むしろ、客付けの業者は「風変わりなオーナーさんかな?」という可能性を疑うことになります。

複数の不動産業者から売り出しを進めたいのであれば、専任媒介だが他業者に広告許可を積極的にする業者のほうがいいのではないかと思います。

不動産屋から嫌われる

しばしば「高値で売却したいので、不動産会社同士で競争させたい。ゆえに一般媒介で依頼したいと思う」というご主旨の売却のお問い合わせをうけることがあります。

相場以下の安い物件を早く売るための戦略として、囲い込みを避けて、一般媒介で競わせるという戦略は適切に機能する可能性があります。しかし、不動産業者同士を競わせて高値での成約を目指すため、一般媒介を活用する戦略は、明らかに誤っています。

安くもない物件を売るのに各不動産会社が競争することは決してありません。まずもって、利得を得られる確率が数分の1に下がるため、他の物件に「広告費」「人員」など、他の物件のリソースを振り向けたほうが、不動産会社の視点では、手数料に到達する可能性は高くなるからです。

高値で売却したいので、不動産会社同士で競争させたいという相談は、どの営業パーソンでもあると思いますが、独りよがりの可能性が高いことを認識しています。相場の上限で売ろうとするならば、適切なスキルをもつ不動産のプロと良好な関係構築の重要性を強調し、共同作業を進めることが適切です。

客付け業者は不審がる

上の段落の「不動産屋から嫌われる」という認識は不動産会社であれば共通の認識です。紹介をするにも、客付けに回る業者は何かしらの警戒感を抱きながら進めることになります。というのも、不動産業者との商談中に不動産営業パーソンのコメントを、いっさい受け入れなかった可能性が高いということです。

5社も6社も一般媒介としてレインズに出ている状態は滑稽で、たとえば、「商談は手間がかかる売主さんかな?」「いろいろ変わったところがある売主さんかな?」「疑り深い方なのかな?」と考えてしまいます。

いろいろ変わったところがある人

一般媒介を用いた囲い込み

囲い込みをさせないための一般媒介

そもそも、一般媒介とは3種類ある媒介を委託する契約の類型のうち、お客様自身が複数の業者に売却を依頼することを可能とするものです。複数の業者に依頼をすることができるため、各業者間のけん制が働くので囲い込みを防止することができるという論法です。囲い込みをしてジックリ販売をしていたら他業者に持っていかれるわけですから、それより片手で契約するほうが良いということです。

しかし、その反面、「レインズに掲載しなくてよい」「媒介活動の報告書の提示が必要ない」というデメリットも存在します。

囲い込みとなる一般媒介

そこで、囲い込みのテクニックとして、あえて一般媒介契約にして、レインズへの登録義務を外すという手法が存在します。

上述の通り、一般媒介ではレインズ登録の義務がありません。他業者の対応をすることがなくなり、業者が物件を完全にコントロールすることができます。合法的に物件を売り止めにすることができます。

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ときどき、売主の仲介手数料無料サービスを見かけることがあります。手数料を売主からとらず、買主からとることで収益を上げて業務を遂行させるということです。このサービスは囲い込みの延長線にあるものです。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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