正しい査定の見極め(高額査定のデメリット)

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不動産の査定価格には「売出価格」「相場価格」「成約価格」の3つがあります。「売出価格」で販売をしますが、価格変更により「相場価格」に近づいて、最後に「成約価格」で決まります。

不動産の査定は約束価格ではありません。「私は○○万円だと思う」という思いを述べているにすぎません。

あえて高額査定を出す意図は、「情報の非対称性」と不安につけ込んで、物件を売却を受託することです。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

そろそろ売ろうかなと考えたとき、まず始めるのは査定です。どの不動産関連サイトをみても、「査定は無料・お気軽に!」などと書いてありますから、気軽な気分で査定を依頼してみます。不動産売却の流れの中でも、一番最初に取り組んでみると思います。

価格の概念には3種類ある

多くのお客さんは、査定と言えば「売れる価格」「妥当な価格」「相場価格」だと思っています。普通の感覚ではそう考えるのは当たり前です。

しかし、ほとんどの不動産業者が提示する価格は「売出価格」です。ここに意識の差があります。

売出価格

英語でいうとasking priceといいます。提示価格です。身もふたもない言い方をすれば、願望価格です。

後述の相場価格をベースにしていますが、あくまでも売り出そうとする価格です。不動産業者に査定を依すると実際は売出価格の提示が多いと思います。これで決まるとは思っていない金額で、成約が予想される金額より、少し高い金額です。ほとんどの業者は売出価格の提示からスタートです。

相場価格

不動産業者が考える売れる価格。物件の実力です。英語でいえば、market priceでしょうか。相場は成約価格をベースに検討した価格で、成約する可能性が高い金額です。

大型マンションで事例が豊富でもない限り、実際に物件の適切な査定を提示するには、調査・検討を要します。それには時間と費用のコストがかかります。お互いがテーブルについた段階では良心的な業者ならば手の内を明かしてくれると思いますが、そうでなくても、売却委託の商談が進んだ段階で確認をすべきです。

成約価格

英語で言うとselling priceです。

成約価格は、実際には、売出し価格から値引きがある場合もあります。査定価格=成約価格と考えていると、場合によっては痛い目を見ることになりかねません。

成約価格は個別の事情が反映されますので、必ずしも相場と一致するわけではありません。

成約価格は実際に成約した生の価格情報です。不動産業者であれば、レインズや東京カンテイなどの機関を通して情報を取得することができます。しかし、これらは個人情報でもあります。個人情報なので、一見のお客様、まだお会いできていないお客様には、むやみに露出することはないはずです。

査定の3大手法

不動産評価の手法には、原価法、収益還元法、取引事例比較法の3種類があります。それぞれに特徴があり、不動産の用途・現況によって使い分けることになります。

取引事例比較法

マイホーム用の不動産ではもっともよく用いられる評価手法で、マンション、中古住宅、土地などで有効な手法です。対象不動産と条件が近い物件の取引事例を選択し、取引価格の事例から必要に応じて対象物件の補正、利便性による補正、時点による修正などを行います。地域要因や個別的要因を含め比較評価します。

近隣地域か相場が類似しているエリアで、対象不動産と似た不動産の取引が行われている場合に有効です。しかし、感覚的な部分の影響がありますので、評価者士により内容に差が生じます。

AI査定なども基本的にはこの手法です。

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収益還元法

収益還元法は賃貸されている投資用不動産に特に有効な手法です。賃料から予測される収益で対象不動産の価格を逆算する手法です。

収益還元法は単純な数字の比較が勝負の世界です。個人の好みが入る余地はなく、地域性や仕様・間取りで決まることがありません。そのため、取引事例比較法よりは、査定価格が低く出ることがほとんどです。

過去の運用履歴とその数字の信頼性が前提となりますので、賃料の妥当性と利回りレートの妥当性の検討を要します。収益価格を求めるには、直接還元法とDCF法の2つの方法があります。

1.直接還元法

一定期間(通常は1年間)の純収益を還元(還元利回り)で割って、100を掛けて収益還元価格を求める方法です。不動産を長期に保有する場合に適してします。利回り率の選定がかぎとなります。

対象不動産の収益価格=一期間の純収益÷還元利回り

例えば、還元利回りを5%と設定し、年間の収益が120万円、年間経費(維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料・空室等損失相当額等)が20万円だったとすると、物件の収益価格は2,000万円になります。

(1,200,000円-200,000円)÷0.05=20,000,000円

2.DCF法

対象不動産の保有期間中に得られる純利益と期間満了後の売却によって得られると予測される価格を、現在価格に割り戻して合計する方法です。直接還元法より予測の精度を高めたもので、内容も複雑となっています。不動産ファンドなどが用います。

原価法

対象不動産を作り直したらいくらになるかを基に不動産を鑑定評価する方法です。専門的には「再調達原価」という言い方をします。仮にもう一度建築・造成した場合にいくらになるかを割り出します。築年数が経過した場合には、建築後の経過年数による価値の低下を引いて現在の価値を推定します。例えば、中古住宅の原価法で大雑把な例をあげると以下のような式で導くことができます。

積算価格=総面積×単価÷耐用年数×残存年数(耐用年数-築年数)

高額査定の意図

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査定の意図を見極める

不動産会社の査定は、会社や担当者の相場観、調査手法よって影響を受けます。しかし、事実上、もっとも査定に影響を与えるのは、不動産会社の営業戦略ですかもしれません。

複数業者に査定を依頼しても、高すぎる業者と安すぎる業者は注意すべきです。委任を取りたいがための「釣り価格」で、あえて高い価格を提示する業者もいます。

物件の数を集めないとなりませんので、一部の不動産会社では、大きな不動産会社でも、いびつな価格設定にしていることもあります。

高い金額を提示する業者にすがりたくなるのは人情ですが、査定価格は成約金額を約束するものではありません。鵜呑みにすると売却の失敗につながります。売却金額を約束できるのは「買い取り」の場合だけです。

高値査定で売主を釣り媒介を取る

まず、仕事(売却委託)を取らなければ始まりません。売却受託も競争です。そのためには、他のライバルとなる業者の排除が必要です。そのように考える考える業者は、けっこうな確率で存在します。

そこで、査定段階での戦いの進め方として、売却受託の入り口でお客さんを喜ばせようとする業者が出てきます。後で価格を値下げすればいいと考えているのであれば、売れる可能性が低い高額査定を、あえて提示する不動産会社もあります。

その目的は売却の委託を受けることです。とにかく物件をお預かりすることです。普通の一般個人は、高い査定をした不動産業者に委託したくなります。名前のある大手ならなおさらです。

委託を取って、他の仲介業者を排除できれば、あとはゆっくりと料理すればいいわけです。物件の囲い込みも可能です。物件を囲い込めば、じっくりと不安にさせることもできます。

在庫は売れても売れなくてもかまわない

極言をすれば、仲介を行う不動産会社は売れても売れなくてもかまいません。もちろん、早く売れればいいのですが、お客様の失敗が業者の失敗ではないわけで、数多くのラインナップを抱えていれば、在庫からどれか売れればいいのです。中古車買取などと違い、不動産の場合は査定はあくまで予想に過ぎないことは、頭の片隅においておく必要があります。

普通の人間であれば「言葉には責任がある」と信頼して、提示した査定価格は適切な売却価格だと思うものです。しかしそこがミソで、うまくお客様の心に入り込みます。言ったもん勝ちの世界なのかもしれません。

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たとえば「専任返し」ですが、これなどは仲介業者にとってはおいしい仕事です。「売れない、売れない」と報告し続けて、最後に業者に買取をしてもうことで、手数料が倍々となって帰ってきます。手数料売り上げのノルマが厳しい大きな会社でも行なわている形跡は、よく見ることがあります。

査定で金額を約束できるのは買取のみ

売却金額を約束できるのは「買い取り」の場合だけです。商談を進めるにも、実際に責任のある数字を出さないと嫌われます。コミットメントを伴う分、査定にも緊張感があります。注意しましょう。

ただし、流通価格と比べると、買取価格は下がる傾向にありあます。

高額査定の弊害

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高額査定がでれば、売主は期待も膨らみます。その期待につけ入るのが高額査定のミソです。しかし、あまりに相場とはなれた金額設定で売り出せばどうなるでしょうか。現実にはまったく内覧依頼や引き合いはありません。しばらくすると、業者から連絡が入り、「販売価格が高いので内覧がない状況です。価格を下げましょう!」ときます。これは作戦です。

売主が現状を「心から理解させて」、売れる値段まで”下げ交渉”を迫って来ます。これを意図的・意識的に実践しています。

「値こなし上手は売り上手」

かつて、筆者には、大手不動産会社にいた同僚がいたことがありますが、その大手の業務マニュアルには「とにかく高く査定をして委託を受けること」で記載されているそうです。この交渉が上手な担当者を「値こなし上手は売り上手」というそうです。

「確度の高い予想はこの価格。したがってチャレンジはこの価格。だからこの価格で売り出しましょう」こういう提案をする会社さんであれば、いいかもしれません。

売却チャンスを逃す

高額査定により売れなかった結果、時間のロスや、精神的な負担が増大します。最初から高いと理解して、じっくり構えているといいのですが、「これで売れるもんだ」と考えていると、ハラハラしたり、けなされたりする感覚になり、心が痛くなります。

より具体的な弊害としては売却チャンスを逃すことです。心が痛むだけならストレスを発散すればいいのですが、売却チャンスを逃して心理的に追い込まれると、必要以上の値下げに応じやすくなります。場合にっては買取業者への売却や、仲介業者からの買取となります。この場合には、相場の2~3割ダウンで終わることになります。

大切なのは根拠

異常な高額査定を見極めるのに、大切なのは根拠です。釣りの査定から入る業者の場合には、高額査定は意図的に釣ろうとしてますから、鵜呑みにすれば弊害が出る場合があるということです。相場とかけ離れた金額を設定しても誰からも見向かれることはありません。買主であるお客さんと同じ目線に立てば、それはすぐにわかることです。

一般個人の住宅をリノベーション済みの値段で売却しようとしても、戦略がなければ失敗します。当社の査定で売却の戦略も考えながら進めています。

不動産業者は成約事例と価格のデータベースにアクセスできます。要望すれば売却事例を見せてくれます。商談を進めるときには。ぜひ開示を請求しましょう。

※成約データベースは個人情報のカタマリなので、見ず知らずの方に見せることはできません。対面対応などを通して、不動産業者側からお客様のことを信頼ができる環境にあれば可能です。

ネット一括査定の利用

高額査定を謳うネットの一括査定をする不動産会社の思惑も同様です。

ネットで査定が取れるカラクリ

ネットの一括査定は見込み客の紹介というカタチで、「査定依頼の反響1件あたりいくら」という課金をされます。当社も参加したことがありますが、だいたい1査定を取得するのに5000円~1万円の費用を支払います。

問題なのはこの次のステージです。一括査定サイトは、システムの仕様上、複数の不動産会社を競わせる形をとります。売却の受託をするため、各不動産会社はライバルの査定を予想しながら自社の査定をします。ぼやっとしていると他社に受注を取られます。

このように提示金額が上がってきます。最終的には「売れない金額を提示する」状態で、みなが落ち着くことになります。これが「一括査定」で高額が出てくるからくりです。

目立つためだけの熾烈な戦い

もちろん不動産会社がサービスをするのは、査定を通して売却希望の方にアプローチして、媒介を取るのが狙いです。査定をしている不動産業者さんは、課金を払って査定に参加しています。1万円をどぶにすてることになるので、不動産会社は高額査定をしてでも、まずは物件をお預かりしなければなりません。そこで、査定を予想しながら自社の査定をします。つまり適正価格からかけ離れた査定が出現することになります。

不動産業者も振り回される?

いろんな一括査定サイトの運営会社さんから営業電話がかかってきますので、面白い提案がないか話を聞くようにはしていますが、正直者が馬鹿を見るという状態で落ちついているため、当社は現在のところ参加していません。

本来の一括査定なら、ネットを活用した集合知が形成されるという、いいシステムだと思います。今のところは、善意を発揮することができないシステムとなっているようです。

当社の場合は売却の査定・商談依頼は当社サイトの売却依頼で受けております。囲い込みをしないことで、適正な手法でスピード・高額売却を進める手法です。ロータス不動産の売却も、ご検討ください。

正しい査定を見極める

分厚い査定書をもらったとしても、何を書いてあるのか、たいへんわかりづらいです。そもそも、査定をしてもらっても、釣り価格かもしれません。個人の力量では、妥当性の検証が困難と感じるかもしれません。

信頼に足る業者かどうか、主体的に査定の正しさを見極める必要があります。

査定の団子の部分を見る

不動産査定をするにあたっては、どの不動産業者も過去の物件の販売事例を見ています。同じ根拠を用いる以上、本来、価格査定に大きな差は出るはずはありません。そこで、突出して安い査定、突出して高い査定を除外します。すると団子になっている部分があるかもしれません。ここが正しい査定となる可能性は高いです。

少し大きい気もしますが、5%以内の差ならば団子と見ていいでしょう。誤差の可能性もあります。10%以上の乖離があると、価格査定に差が大きいと感じるはずです。

ただし、全社で釣り査定をしていたら、全社の査定が高くなります。そこで検証も必要です。

価格査定

突出して高い査定を除き、団子となっている部分を見る

類似物件の販売情報を確認

時間に余裕があるときに、価格事例を確認していきましょう。常に定点観測を怠らないようにしてください。同じ情報を見続けることで、流れを理解するのです。

過去の取引事例を、親しくなった不動産業者から提供をしてもらえれば一番良いと思います。ただし、成約事例は個人情報の塊なので、面談しないと難しいはずです。その場合には、売出事例でも構いません。

売出事例から大きく値下がりする(価格交渉をする)事例はあまりありません。せいぜい、100万円程度です。実際には活動を売出をしてみるとわかるはずです。

そこで、販売情報・売出事例から、物件が削除された時の価格に注目しましょう。

調べ始めの時は、似たような事例がないかもしれません。その場合は、築年から前後5年程度の建物で、同じような雰囲気の街並みにある物件の販売事例から推測しできます。低層住宅地と商業地では、やはり価格が違いますので、考慮しなければなりません。

相場情報を掲載するサイト

「イエシル」「マンションマーケット」「ホームズ不動産アーカイブ」などが該当します。

㎡単価・坪単価だけだと、何を根拠にしているかわかりませんので、信頼してはいけませんが、「具体的な価格」と「面積」と「階数」が掲載されていれば、参考になる場合があります。

ただ、ネットで見れる相場情報で注意が必要な部分もあります。不動産サイトの価格情報は、【リノベーションマンションか】なのか【個人売出価格】なのか、判断できません。当時の状況か判然としないのは、少し気になります。当然ですが、リノベーション物件のほうが高くなります。

その意味では、「ホームズ不動産アーカイブ」は過去にホームズの売り物件情報サイトに掲載された情報を写真付きで載せていますので、分析の参考になるかもしれません。

『不動産アーカイブ(ホームズ)』
https://www.homes.co.jp/archive/

『イエシル』
https://www.ieshil.com/

『マンションマーケット』
https://mansion-market.com/

また、手前みそですが、当社の営業活動エリアであれば、リノベーションマンションの販売事例を蓄積しています。リノベーションマンションの相場は、ある程度、詳しく確認ができるはずです。また、リノベーションマンションから逆算した【買取価格】【個人売出価格】も掲載しています。

『マンションカタログ』
https://www.lotus-asset-and-property.com/property_catalog/

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