中古マンションは築何年ぐらいがいいのか
築年数が若いと価格下落を想定しなければなりませんし、築年数が古いと耐震性と劣化を気にしなければなりません。
築年数も大切ですが、劣化については管理体制により食い止めることができます。管理体制が良いマンションか重視しましょう。
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目次
築年数を考えるポイント
築年数を考えるポイントは『耐震性』『市場性』『メンテナンス性』『物理的な劣化』だと思います。
耐震性による物理的な問題
1つの大きな節目は新耐震かどうかです。新耐震とはご存知の通り現在の耐震思想につながる耐震基準で、革命的な転換がなされたものです。阪神大震災では実証的な結果を見せることとなりました。具体的には1981年の6月1日から施工された物件に適用されます。つまり令和3年の時点では築38~39年以降の物件となります。
新耐震の物件であれば、ローン控除の利用も「耐震基準適合証明」の利用により可能となります。そのような意味でも、新耐震であることは重要な目印となるでしょう。
旧耐震の年代のマンションでも耐震改修をすることで耐震性を確保できます。
市場性(流通性)による経済的な問題
市場性という意味では、築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)(東日本流通不動産流通機構2020年2月)によると、築25~30年くらいからは下落率がひとまず安定するようです。詳しくはリンク先の情報をご覧いただくとして、価格面ではこのあたりが目安になるかもしれません。
ただし、築30年以降は価格下落が安定するといっても、現下のローンの情勢では、1DK以下の間取りの旧耐震はローンが利用しづらい傾向にあります。これはこの数年の現象です。不動産市場の変動、金融市場の変動によって影響を受ける要素なのだと思います。
実際、検討をするお客様の動向も新耐震か否かで変わることもあります。それに応じて金融機関などの評価も新耐震か否かでかわることもあり、受け付けない銀行もあります。お客様の動向と金融機関の動向は相互的に影響をもらたしあって、市場性に影響を与えるようになります。
メンテナンス性
メンテナンス性の問題で重要なのは配管の更新です。この問題でよく話題になるのは「スラブした配管方式」です。スラブとはコンクリート躯体のことであり、スラブ下配管とは、上の階の生活排水をスラブ下(つまり、下層階の天井の石膏ボードの上)に排水管を設置して、排出する方式をいいます。
この方式による建物が昭和50年代前半までは多く、50年代後半でも一部あります。
配管のメンテナンスは漏水に直結しますので、しっかりメンテナンスをすべきものです。しかし1住戸で完結しないスラブ下配管の建物による漏水は、一度生じると、上階の住戸も下階の住戸も生活上の支障が出ます。
もっとも、スラブ下の配管は共用部分であるとした判例(平成12年3月21日最判平成9(オ)1927。建物共用部分確認等請求事件)もありますので、漏水時の修理は最終的には管理組合が持つものとされますが、不便になることは避けられません。
コンクリートのそのものの劣化
メンテナンスについてはコンクリートの劣化も考えなけばなりません。
「コンクリートは何年もつのか」という話は実は難しい問題です。日本の分譲マンションが1950年代にできて以降、社会的な要請で買いたいに至った物件は多いものの、コンクリート自体が崩壊したマンションはなく、社会実験の最中という言い方をしたほうが正しいのかもしれません。
この問題は「コンクリートの中性化の速度」が重要です。「コンクリートの中性化」とはコンクリート中の鉄筋が酸化して、強度が低下する現象です。ただ、実際のコンクリートは厚みを持っておりいます。保守的な計算では、なにもしなければ、コンクリートは1年で0.5ミリずつ中性化すると想定されているので、60年程度で鉄筋に到達する計算です。
ただ、ことはそう単純でもありません。中性化はコンクリート自体のひび割れと、その維持管理に影響を受けます。たとえば、「三井物産横浜ビル」は1911年築、築110年の初期の鉄筋コンクリートの建造物ですが依然して健在です。古代ローマの建築物もコンクリート製です。つまり、適切に管理をしていれば中性化の進行を食い止めることも可能です。
三井物産横浜ビル。関東大震災で横浜の建物群が壊滅的な打撃を受けたときでも当建物は倒壊を免れたので、鉄筋コンクリート造の地震に対する有効性を印象付けた。
築年数よりも大切なこと
このように考えていくと、築年数の問題とは、耐震(構造)、外観、配管の劣化と維持管理の問題だとわかります。耐震の部分については何ともしづらい部分はあるが、配管・劣化の部分については管理体制の良し悪しで制御できます。
築古のビンテージマンション
築年数が古くてもしっかりとした管理体制で運営されているマンションがあります。このようなマンションは築年数が古くても物理的によく維持されており、結局、流通性も高く維持されている傾向があります。
広尾ガーデンヒルズは1987年2月に全体が竣工したビンテージマンションです。
「マンションは管理を買え」
そう考えると、築年数の問題よりも、管理体制の良し悪しが重要なポイントのようにも思います。「マンションは管理を買え」とはマンションの名言です。劣化に到達する前ならばともかく、想定される劣化を踏まえて事前に行動をしていけば、劣化を食い止めることができます。どのようなマンションがいい管理体制のマンションかは別の記事に譲りますが、築年数よりも大切なのは管理体制の良し悪しのようにも思います。
南千住スカイハイツの共用部は維持更新が継続されています。
2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。
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