不動産取引で行う物件調査とは?

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不動産業者ならびに宅地建物取引士は、不動産取引のために物件調査をしています。不動産売買で顧客に正しい情報を提供することで、判断を適切にさせる責任を、仲介責任といいます。

仮に元付業者・売主による情報提供がて低レベルでも、重要事項説明書の調査の段階で悪い情報も確認できるで、買主は安心して契約に臨むことができます。

売買契約の前段階でも、元付業者として販売情報を作成するときにも、不動産業者は物件調査をしています。

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調査はどのようなことをしているか

不動産売買においおては、お客様はいろんな場面で判断をすることになります。判断に必要な情報を提供するためには根拠が必要です。この根拠を確かにするために、不動産業者は調査をします。

何のための調査なの?

不動産取引で扱う金額は大変高額であるため、宅地建物取引業法、公正取引規約などにより、厳しい規制が課されています。

これらの文書の作成に当たっては、無根拠であってはなりません。「たぶん」「おそらく」などの文言はあってはなりません。無根拠に「最高」「ベスト」「No1」などの文言も使用をしてはいけません。

もっとも、正規の業者として運営している業者であれば、このことは十分承知していますのでしっかり業務を行っているはずです。

たまに失うものがない業者(担当者)だと、調査レベルが低いと言わざるえない場合もあります。そのため、不動産業者の調査能力は大変重要となります。

調査でしていること

そこで、文書の作成にあたっては、不動産業者は物件に関する調査を行います。根拠を調べるための調査は、役所調査、関連業者調査、聞き取り・目視の調査など多岐にわたります。

この調査に手抜かりがあると、契約の文書もスカスカになってしまいますし、売出に利用する販売図面も空白が多くなります。

なお、建物の瑕疵の有無についてはホームインスペクションという専門の業者さんがいます。

調査が必要な書類など

不動産業者は、お客様の購入や売却の判断に重要な影響を及ぼす書類といえば、まずは販売広告、そして契約書重要事項説明書などの契約文書です。

販売促進のための調査(販売図面など)

販売図面だけでなく、販売チラシ、ホームページも同様ですが、販売資料を作成するためにも調査は欠かせません。販売情報に的確に表現するためには、しっかりと情報をピックアップする能力が欠かせません。

販売資料の場合には、物件の優良な部分を引き出して、法に反しないカタチでアピールする必要があります。マンションなら過去の分譲パンフレット、売主などへの聞き取り調査、現地の目視などを用います。

優れたものとしてアピールできる情報を拾い上げることは、物件のポテンシャルを引き出すことに他なりません。これには適切な経験と能力が欠かせません。

もちろん、物件概要を遺漏なく掲載するには、役所調査も重要です。

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販売図面で情報がスカスカなのはNG。しかしイメージが先行して奇麗なだけでもダメです。

案内・商談のための資料

内見を終えた後、購入対象が絞れた場合には、より詳細の資料が欲しいはずです。買主の不安を取り除くことができるような、より詳細の資料を提供できるよう、調査で情報を固めます。

販売図面よりも詳しい資料のことを「一件資料」と言っています。

契約をするための調査

契約における文書では、売買契約と関連書類があります。

不動産の購入の判断をしていただき申し込みをいただくと、当社の場合の不動産購入の流れは、申し込みから売買契約までの期間を数日から一週間ぐらいを想定しています。この間、住宅ローンの審査と同時に平行で、調査を行てっています。

不動産売買契約では、重要事項説明書の内容に納得してから判断して、契約を締結するという制度になっています。

そこで、仮に売買契約の場面で契約がキャンセルされる可能性がある重要な情報が生じた場合、現場でキャンセルをされるのは、だれにとっても不利益で無駄であるということから、当社では、契約の日をまたず、直ちに報告をするようにしています。

このように、売買契約書の作成のための調査は重要事項説明書に直接影響を及ぼしますので深い注意を要します。

役所調査

役所調査は調査の起点にしてもっとも重要な部分です。23区など主要都市の役所調査では、かなりの部分がオンラインで取り寄せることができるようになりました。

権利関係

「法務局(登記所)」にて登記簿謄本などを取得ます。

現在の所有者の状況などを確認します。初歩的な部分では、所有者と販売依頼者が合致しているかなどから確認します。どれ程の期間を所有したか、抵当権などの面倒な権利はついていないか、住宅ローンの借入はいくらかなどもわかります。例えば反社会勢力だったりすれば大ごとです。これらを確認します。

地図(公図)、建物平面図、地積測量図なども法務局で取得できます。周辺の権利関係などを確認できます。

登記簿の例

登記簿の例。所有者や権利関係がヒストリーとともに確認できます。

都市計画情報

市区町村役所の「都市計画課」などに出向いて確認します。多く場合、情報の写しをもらえますが、役所によっては聞き取りとなります。

土地や一戸建ての場合は慎重な確認が必要ですが、合法に建築された中古マンションであれば、この項目はあわてなくてよいと思いもます。

都市計画情報では、そもそも建物を建設していい土地なのかを確認します。建設が可能ならどのような建築物を建てることが可能か、どの程度の面積まで建設可能かも確認しできます。

土地には、それぞれに建築可能な建物に制限があります。例えば、一戸建てしか建設できないのか、風俗店も含めて建設可能かなどです。それを確認できます。

市区町村で独自の条例なども確認することができます。対象となる物件の規模に応じて、情報を獲得します。

都市計画

都市計画情報の例。用途地域などがわかります。

道路調査

建物を建築できるか否は都市計画情報だけではありません。建築基準法により前面道路の法律的な位置づけによっても影響します。この情報は、市区町村・都道府県役所の「建築課」などで調べることができます。

道路のように見えて建築基準法では道路でないという道路がときどきあります。道路でないということになりますと、建物は建築することができません。

どの程度の規模の建築物が建築可能かは、幅員によって判断できます。幅員は市区町村・都道府県役所の「土木課」「道路課」などで調べることができます。

道路台帳

道路台帳の例。公道の場合には市区町村・都道府県役所で情報が確認できる

宅地開発関連の情報

宅地開発を行った場合、開発登録簿が役所には備えてあります。道路幅員、区割り、建物の高低差等の図面があります。

建築関連情報

建築関連の情報で重要なのは「記載事項証明」と「建築物の概要書」です。これも、市区町村・都道府県役所の「建築課」などで調べることができます。

まず重要なのは建築確認と検査済の状況です。市区町村・都道府県役所では、すべての建築物の建築確認と検査済の番号を保管しています。逆に言うと、建築確認と検査済の番号がない建物は、違法建築の疑いが出てきます。

建築確認台帳 記載事項証明
建築確認台帳 記載事項証明の例

中古マンションの場合には「定期調査報告」も市区町村・都道府県役所では保管しています。これは建物管理の状況を確認できる書類です。管理会社などを通してマンションは建物設備を維持していますが、数年に1度、外部業者により点検を行います。この点検により判明した不具合・故障等の有無について、調査し報告する義務があります。

定期調査報告の例

定期調査報告の例。定期点検の実施状況を把握する。

土地状況調査

埋設文化財

もし、地中に移籍などがありますと、試掘などをしなければなりません。京都、大阪、奈良などはおなじみだと思いますが、関東でも古くから人の定住がありましたので、「江戸」「鎌倉」「古墳」などは要注意です。

文化財の試掘は、建物建築にとっては障害ですが、居住者にとっては、「大昔から人がそこにいた」という証拠に他なりませんので、いい土地の証明だったりもします。

ハザード調査

近年、たいへん注目されている情報です。ハザードマップなどの形で確認できます。東京ですと、洪水の氾濫予想などがハザードマップでわかります。神奈川の沿岸沿いでは津波の予想も重要です。地盤関係では液状化の情報も取得できます。

地域によっては「噴火」「津波」なども重要な情報のようで、かつて福島の情報をしらべたときは、会津磐梯山の噴火予想などが共有されていました。

ハザードマップポータルサイト

周辺環境調査

環境関連の法律に基づく工場の届け出により、周辺の工場の素材を確認します。

過去の利用状況

登記簿謄本によっても確認できますが、より深い調査が必要となった場合、過去の地図、工場の届け出などを確認して、過去の土地利用状況を調べます。土壌汚染の疑いがあるときには重要な調査です。

関連業者調査

管理会社に対する調査

管理会社に対する調査は「管理の重要調査報告」が主体です。建物管理の状況を確認して、優良な管理状況化の推測に役立ちます。

具体的には「修繕積立金残高」「借入状況」「管理費などの滞納状況」「管理人の勤務日」「導入済み設備」「ペットの可否」や、その他諸々の情報がわかります。

建物の持続可能性は、「修繕積立金残高」などである程度推測できますが、大規模修繕計画を実施しているマンションにおいては、大規模修繕計画表が作成されていますので、より詳しく推測が可能です。

重要調査報告

管理の重要調査報告書の例です。管理会社にもよりますが数ページわたるレポートとなります。このマンションの場合は9ページ構成でした。

インフラ(設備)提供業者に対する調査

上下水道、ガスの配管敷設状況を確認します。もし前面に配管がない場合、自主的に配管すべきかどうかを検討しなければなりません。通常20~30万円でよい引き込みコストが、遠方のメイン管から引き直すとなると、数百万円になって莫大になる場合もあります。

土地や一戸建てを買う場合には非常に神経を使う部分です。

水道管

前面道路の配管の敷設状況を確認します。

一戸建て・土地については、宅地内の水道の埋設管の状況がわかります。既設で廃止された管などがあればこれでわかりますが、この土地の瑕疵に影響する場合がありますので、注意が必要です。。

現在では、都市部では水道がないことは考えづらいですが、どこから引っ張っているかも重要です。場合によっては警戒を要する場合があるかもしれません。

ガス管・下水管

前面道路の配管の敷設状況を確認します。

聞き取り調査

書面として取得する以外に、聞き取りで得た情報も重要です。

売主本人

売主本人への聞き取りは、「状況報告書・付帯設備表」などの資料として報告します。特に、買主が大いに関心をもつ、劣化・故障の状況の告知、告知事項の通知はここで書面として提示されます。

売主には契約書や民法に基づき表明責任というものがあります。ウソを告知すれば契約不適合責任、不法行為により、賠償の責任があります。嘘を告知しても裁判で負けるとわかっているので、若しかしたら存在するかもしれませんが、ウソを告知する人は実際には見かけたことはありません。

管理人

マンションの場合、管理人に対するヒアリングも行います。ゴミ出しの時間制限など、生活のルールも教えてくれます。駐輪場の数も管理人が把握している場合がほとんどです。

さらに、うまく聞き出すことができれば、周り迷惑な家等の情報も教えてくれることもあります。個人情報として拒まれる場合がありますが、多くの場合、口を濁されるという感じでしょうか。

目視調査

目で見ることで異常な状況に気づくことがあります。外観の劣化状況、近隣の不審な住居などです。ゴミ屋敷の気配なども確認できるかもしれません。

目視とは異なりますが、少し時間を長くしてその場にいることで、音やにおいの変化が時間の経過による生じる場合があります。これも重要なヒントです。

近隣居住者

居住の感想や印象は、通りがかった人に声をかけると、誠意ののある態度を示せば、案外こころよく答えていただけるものです。口コミサイトなども役に立つかもしれません。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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