住宅ローン契約(金消契約)の準備と流れ

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住宅ローン契約の事前準備では、契約予定内容の確認(金利タイプなどローン商品の内容選択や実行スケジュールの設定)、お持物の確認・手配がポイントです。

住宅ローン契約の当日は事前準備に基づき、確認、記名、押印が中心となります。

住宅ローン契約とは正式には「金銭消費貸借契約」といい、金消(きんしょう)契約と略しています。よく使う用語ですので覚えていただいてもよいでしょう。

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住宅ローン契約(金消契約)のとは何か

住宅ローン契約とは次の1)+2)もしくは1)~3)にて構成される契約です。

  1. 金銭消費貸借契約
  2. 抵当権設定契約
  3. 保証委託契約

住宅ローン契約は諾成契約

なお、少しわかりづらいのですが、住宅ローンは要物契約とされています。実際の成立には、もの(金銭)の交付が必要となります。実際にローンのお金が振り込まれないと、契約が成立したことにはならないという意味です。

ローン契約後に他で借入金を増やしてしまったり、転職をしてしまったりすることで状況が変わると、金融機関はローン契約のキャンセルをすることができます。ローンについては個人信用情報を検索すればすぐわかりますので、身分についても、金融機関では何かにつけて身分証などは確認をされます。

なお、2020年の民法改正で、法律の原則は諾成契約(契約書面の交付で契約が成立)となりましたが、金融機関は、事情の変化に関する特約条項等を盛り込み、自らの権利を確保しています。

例としては、ソニー銀行の住宅ローン約款では、1条2項において「当社はローン実行日に第4条記載の返済用口座に借入金を入金します。このローンの実行をもって本契約が成立するものとします。」との記載があります。

金銭消費貸借契約

金銭消費貸借契約とはおな値を借りる契約のことです。金銭を消費して利用する(住宅を買うということです)目的を以って、借主が貸主からお金を借りて、一定の期日に分割して、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のことです。

大手銀行やネット銀行では電子契約が取り入れられるようになりました。電子契約においては押印などなくクリックで進めることができます。銀行によっては在宅で行うことも可能です。印紙も不要なので、最近は増えてきています。

ただ、これだけだと不十分で、住宅ローンにおいては、次の抵当権設定契約を締結して抵当権を設定し、金融機関に購入対象物件を抵当に差し入れるのが一般的です。

抵当権設定契約

抵当権設定契約とは、金銭消費貸借契約に基づくローン弁済の返済が滞ったときに備え、金融機関に不動産を担保として差し入れることを約束する契約です。

抵当権設定契約は法務局に登記の申請を行い、「抵当権設定登記」という登記がなされて、法務局において登記記録として保管され、公開されることになります。抵当権の設定登記をしておくと、裁判所による所定の手続きのうえ、金融機関は建物と土地を競売にかけることができます。

抵当権設定契約は電子契約の対象になりませんので、対面で行います。ただ、対面のしかたに各銀行で工夫がなされています。ネット銀行では司法書士の面談の事前面談の一環として行っています(例:ソニー銀行の契約の流れ)。大手銀行では、決済の直前に行っています(例;りそな銀行の電子契約の流れ)。

抵当権設定契約書

抵当権設定契約書の例

保証委託契約

保証委託契約とは後述の補償契約を前提として、借主(ローンの借主)と保証人が結ぶ契約です。保証してくれることを頼む内容となっています。保証料タイプの住宅ローンを利用するときに締結します。保証料タイプの住宅ローンは金利競争のなかで、手数料タイプに駆逐されて、かなり存在感は低下している気がします。しかし借入期間によっては有利なこともあります。

保証契約というのは、債権者(銀行のこと)に対して「保証人」(保証会社のこと)がなす契約です。債権者と保証人が締結するもので、保証人が、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負うという内容です。

保証委託契約とは借主(ローンの借主)と保証人が結ぶ契約で、借主が保証会社に対して保証してくれることを頼む契約となっています。個人が保証会社と締結する契約はこちらです。

保証委託契約は銀行の系列の保証会社と締結することが多いのですが、独立系の保証会社も存在ます。全国保証信金保証基金MG保証クレディセゾンなどが活動しています。独立系の保証会社は、殿様商売?の銀行系列の保証会社よりも審査判断で柔軟なのが特徴です。

ローン契約の準備

住宅ローンの本審査に通ると準備を開始することができます。住宅ローン契約では契約その日よりも準備のほうが忙しいかもしれません。いろいろあるように感じて混乱しそうですが、大きくは3つの動きにまとまります。

1)ローン承認後 ローン契約日や場所の調整
退去・引っ越しの手配
ローン利用口座の作成
2)ローン契約2週間前まで 決済日の最終確定
金利体系の決定
付帯商品の検討
3)ローン契約前まで 住民票の変更(※)
必要書類・持ち物の準備

金消契約のスケジュール

>ローン契約の準備の第一はスケジュールの調整です。金融機関と契約を行う日時・場所を決めていただきます。時間と場所の設定は金融機関によりルールが変わりますので、下記の参考情報を参考にお決めください。

大手銀行・地方銀行・信用金庫
一般的な銀行・金融機関の場合は、金融機関の支店、ローンセンターにて行います。場所は金融機関の指定、もしくは指定の範囲となります。大手銀行、地方銀行では土日に住宅ローンセンターを営業している業者がほとんどですので、金融機関の営業時間にもとづいて、土日対応できます。ただ、土日は対応力には限りがありますので、ご希望の場合には、日時を早めに決めることが望ましいです。
代理店経由のネット銀行、独立系のフラット35
代理店の事務所、もしくは指定の場所にて行います。時間の融通は利かせることができます。場所についは代理店の事務所が原則ですが、代理店によりお客様のご指定の場所で対応できることもあります。
電子契約
電子契約は自宅で対応可能です。一部の金融機関は店頭でも対応します。自宅ならばどんな深夜でもかまいませんので楽といえるでしょう。ただし、注意も必要です。ネット銀行や一部の大手銀行の契約は、金消契約をご自宅へ書面の郵送往復とオンラインにて行います。郵送の時間がかかりますし、ミスがありますと是正が必要となるため、準備は早め早めに動く必要があります。間違えがあると、スケジュールが破綻することもありますので、慎重に進める必要があります。わからないことは、銀行や不動産の担当者に確認をして進めましょう。

決済の場所と日程の調整

最終の決済を行う日時と場所をを決めていただきます。決済とはお金を払って鍵をもらう行為のことです。ローンの契約時にはいつ資金の実行日を決める必要があり書面に落とし込む必要がありますので、決済の日時は可能な限りお早めにお決めください。

場所は一般的な銀行・金融機関の場合は金融機関の支店やローンセンターの一室にて行います。金融機関によってシステムが異なります。通常の決済は銀行営業日の午前中に行います。1時間程度かかります。

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オンラインバンキングを用いた決済では場所の指定はなく、買主さんの指定によって決定することがほとんどです。通常は、仲介業者の店舗、買主もしくは売主の懇意の金融機関の一室、関連業者の店舗などになるでしょう。

お引越し関連の準備

住宅ローンの本審査の承認が出たらまず間違いなく銀行の判断は変わりませんので、お引越し関連の準備も、ローン審査が承認されれば、準備を開始しても大丈夫です。

マンションであればエレベータのことがありますので、管理会社の打合せも忘れずに。入居の日が見えてみましたら、公共料金の手配も忘れずにしましょう。

  • 旧居の賃貸住宅の解約
  • 引越の運送業者さんの手配
  • 転入の管理会社の打合せ
  • 電話・電気・ガス・水道の移転

ローン利用口座の作成

ローン契約の前には、利用しようとしている金融機関にて、口座(通帳)を作成しなければなりません。ただし、最近は本審査の申し込みや承認後にオンラインで口座作成ができる銀行も増えてきました。

金融機関の口座は取引の基本となるものです。それまでは、預金や自動引落が利用の中心だった銀行口座ですが、住宅ローンでも同様に銀行口座を利用することになります。

具体的には融資資金が振り込まれる窓口となり、返済の引き落とし口座となります。ほとんどの金融機関でローンセンターやオンラインで作成できますので、事前に確認しましょう。既有のお口座がある場合は、その口座を利用します。

銀行系以外の金融機関(フラット35など)を利用する場合は、既存の口座を利用します。

ローン商品内容の選定

銀行において「固定金利」「変動金利」「ミックス」などを選定しなければなりません。ローン契約時には内容を確定させますので、遅くとも、事前準備の段階には、希望する商品構成を申し出なければなりません。

銀行によっては審査時に決まってしまう銀行もありますので、注意をして進める必要もありますが、通常の銀行ならば、銀行側の準備もありますので、2週間くらい前に申し出ることが必要です。

りそな銀行の「団信革命」など、本審査での申し込みが必要な商品を除き、追加で選択できるオプションの団信や保険サービスなどは、ローン契約当日に銀行から説明を受けて、申し込みをすることになります。気になる商品があれば、疑問点をリサーチしてておきましょう。

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住民票の変更

本来、住民票の変更は「引越しをしてから住民票を移動する」というのが正しい形ではありますので、不動産業者というよりも、一般的な慣例として記します。下記のいくつかの理由により、住宅ローン契約に先だち、住民票を変更することが慣例として一般的です。

一つは、新住民票の提出を確実に行うためです。ローンを利用する場合は、銀行との取り決めで、かならず新住民票の提出が求められます。これを忘れると、金利割引の停止により金利が一気に上がったりすることがあります。

また、新住所で登記をすれば、「住所変更」の登記の手間を避けることができます。登記の2度手間を避けることができます。さらに、「住宅ローン控除」「登録免許税の軽減措置」を受けることができる物件は、新住所で登記をしていた方が、スムーズにその軽減措置が受けられるということもあります。

実際に役所に行くと、「いつ引っ越しされましたか?」と役所の人に聞かることがあります。「まだです。これからです。」と答えれば、「それでは引越ししてからまた来てください」と言われます。できれば、金融機関側と住民台帳の仮者側とで取り決めていただき、適切な制度に変えたほうが、いいのかもしれませんね。

住民票は「続柄あり」「世帯全員記載」「個人番号不要」「本籍不要」を指定して取得してください。お一人世帯でも世帯全員の記録を提出します。

持ち物の準備

ローン契約で準備するべきものは以下の通りとなります。銀行によって、決済時精算の場合もあります。

  • 住民票(「続柄あり」「世帯全員記載」「個人番号不要」「本籍不要」)
  • 身分証明(免許証等、健康保険証)
  • 印鑑証明
  • 通帳&銀行印
  • ご実印
  • 印紙(持参不要の場合もあり)

住宅ローン契約の契約当日の流れ

ローン契約当日は、主に手続的な作業となります。それほど困難はありません。銀行店頭の手続きならば1時間半くらいの所要時間です。

契約の説明と契約締結

本人確認・意思確認・商品概要の説明を金融機関の担当者が行い、契約を銀行と締結します。記名と捺印と捺印が続きます。印鑑は実印でなければなりません。

ただ、契約といっても、それまでに打ち合わせた事項、検討した事項を反映しますので、契約時には、特に考えることはありません。慣れていないと冒頭はドキドキすることもあるかもしれませんが、終わってみると、意外とあっさりとしていると感じるはずです。

冒頭で記しましたが、「金銭消費貸借契約」「抵当権設定契約」(「保証委託契約」)を締結して、一件の住宅ローンが成立します。

銀行ブース

ローン契約はこのような銀行ブースで行われます。

付帯商品の説明

住宅ローン関連商品のご案内があります。たとえば、オプション団信等が代表的です。検討を希望する場合、説明を受けることができます。ローン契約日に検討資料の提供を受けた場合には、ローン実行日に加入となるはずです。

付帯商品の例
団体信用生命 標準的な団信では不足する部分について付保するか検討します。
火災保険 銀行を代理店とする火災保険に加入するか検討します。銀行以外の保険でも利用可能です。

ネット銀行の特有の対応

ネット銀行においては、ローン契約はオンライン、指定の場所での面談で行います。ネット銀行は、各銀行の方針により、特有の対応があります。ローン契約と前後して、「面談」を行うことがあります。たとえば、ソニー銀行では、司法書士など対面により、意思確認・本人確認を行います。SBI住信銀行は代理店経由か独自かでアクションが変わります。各銀行により独自の手続きがあり、上記の説明と異なりますので、確認をしてください。

契約調印から融資実行までの流れ

ローン契約の調印を行ったあとは、決済まで準備となります。

自己資金の確認と移動

自己資金を利用する口座に移動して、資金を待機させます。

当社では、決済日の1~2週間程度前をめどに、「諸費用の明細」「金種表(振込や現金の資金別一覧表)」「送金先の明細」を添えて、自己資金分の計算をご案内をしております。明細をご覧いただければ、当日の資金内容をご理解いただけると思います。おそらく、他の不動産業者でも同じように案内をしてくれると思います。

なお、詳細は決済の流れの説明に譲りますが、借り入れたローン資金は、決済の当日に、作成した口座に振り込まれます。振り込まれた決済口座から、売買代金を送金したり、現金引出により、諸費用を支払います。そのため、一つの口座にまとめておく必要があります。別の銀行や別の口座からの送金は混乱のもととなり、対応できません。資金の慣れも見えませんので、銀行も承諾しません。予めご準備をお願いします。

火災保険の決定

プランは自由ですが、住宅ローンでは火災保険の付保が条件となります。実務においては、決済日と同日に申込、保険開始とすることができますので、当社では、決済日にご署名をいただいております。お支払は、後日自動引落かクレジットカードです。小規模な銀行では質権設定をすることがあります。

売主側の準備

買主様の住宅ローン契約は、売主としては直接の関係はありません。ただし、既存のローンがある場合、ローン一括完済・抵当権抹消が最大のポイントです。買主希望の決済日が、売主様が行うローン一括完済日・抵当権抹消日と連動します。買主と売主は、仲介業者を経由して、行動を連携しながら進めます。

具体的には、決済日の1週間くらい前までに抵当権の抹消の手続きを終わらせます。そのために、決済日の2~3週間前には、返済の申し出を銀行の店頭で行います。

当社が売却側に回った場合でも、スケジュールのご案内は欠かしませんので、安心して売却のご依頼をお願いします。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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