ホームインスペクションは必要?不必要?

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インスペクション(inspection)とは建物に対する点検・検査・調査のことです。建築に関する知識がない一般のユーザーに代わり、第三者的な立場から、劣化の状況などを報告します。

インスペクションはまだ不動産売買の習慣の中で位置づけは微妙であり、残念ながらまだ根付いていない部分もあるかもしれません。

筆者の所感としては、インスペクションの意義は感じます。とくに個人間の中古戸建てはやるべきかなと思います。「やるべきか」ということと同じくらい「いつやるのか」も慎重に検討をしなければなりません。

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ホームインスペクションとは

インスペクション(inspection)とはわかりやすく言うと、点検・検査・調査のことです。英語で’inspector’といえば、「警視正」「警部補」という意味もあるくらいです。

専門用語では「建物状況調査」「住宅診断」とも言います。ホームインスペクションとは、住宅に精通した調査員が、第三者的な立場から、住宅の劣化状況などのアドバイスを行なう専門業務をいいます。

見えない不具合を調べる

点検・検査・調査とは、建物の見えない不具合のとことです。

建物の構造の重要な部分、つまり、屋根、外壁、梁、基礎あるいは給排水管などの劣化の状況は、建築に関する知識がない一般のユーザーでは非常にわかりづらいものです。そこで、購入を検討している物件について、第三者的な立場から、住宅の劣化状況、不具合事象の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行なう専門業務の必要性が生じました。

インスペクション1
インスペクションを実施中の様子

ホームインスペクションの相場

ホームインスペクションの相場はおよそマンションで5万円くらいでしょうか。一戸建てだと外壁の劣化、屋根の雨漏り、配管の漏水など検査すべき要素はもっと多くなりますので、10万円くらいになるのではなとおもいます。

宅地建物取引士との違い

インスペクションは宅地建物取引士とは違います。宅地建物取引士、あるいは不動産業者は不動産の専門の資格ですので、きっと建設・不動産の専門ではない皆様よりは、若干は知識はあるといえます。

ただ、実際のところ、不動産業者や宅地建物取引士は、契約のための法律、不動産の経済的価値(相場)の分析(査定のことです)、売出のためのマーケティングやアピール、住宅ローンのプロです。このように知識・技術・経験に広範な範囲におよぶことから、「ゼネラリスト」と言ってもいいかもしれません。

これに対して、1級・2級・木造建築士や施工管理技士等の資格を持つ人々が建物のスペシャリストです。その専門知識を「建物の劣化状況を調査する」という趣旨で磨き上げてるのが、ホームインスペクションを行う人達です。

ホームインスペクションが興った背景

ホームインスペクションという業務はシステムとして確立されたのは、アメリカからだそうです。

日本でも草創の人々がこれらの体系を参考にしてシステムを輸入したと聞いています。おそらく、最初の頃は見よう見まねのところからスタートしたと思いますが、いまでは宅地建物取引業法でも、このようなサービスが存在することを紹介することが義務付けられています。

当社の場合も、法の趣旨にのっとり、ホームインスペクション制度について、購入申込書の中で記述する部分を作成して、希望するかしないかについて、必ずヒアリングをするようにしています。

まだ根付いていない部分も・・・

ただ、ホームインスペクションという制度は、まだ浸透しきれていない部分もあります。当社は、創業10年以上の会社であり、免許番号3です。不動産の売買契約は数何百回と実施していますが、実際にホームインスペクションを実施されて方は片手にかぞえるほどであるというところが実情です。

そこで、この記事に記載するような事情をご紹介して、ホームインスペクション実施の希望をご判断をいただくようにしています。

売買契約とインスペクションの関係

売買におけるプロトコル(手続き)の一環として一般的に認識されている欧米と、まだ根付いていない日本とでは、売買契約のなかでの位置づけもややおkとなります。

海外での例

海外の場合、とくにアメリカでは、不動産の引渡だけを専門に担う職責があります。エスクローといいます。ネットのフリマアプリの聞くことがある「エスクロー」と同じ意味です。エスクローは、不動産の売買契約を行うと、引き渡しまで、不動産業者ではない中間の立場に立って引渡しを監督します。

エスクローはちょうど司法書士と不動産屋の中間のような存在なのですが、取引に問題がないことを認証されるまで、代金と権利に関する書類を預託を受けることまでします。そして、ホームインスペクションもエスクローのなかの一環として位置づけられているそうです。

仮契約から本契約に至るまでにホームインスペクションを実施して、そこで問題が生じれば、本契約で是正するか、金額交渉を行うか、本契約を行わないかの判断をするように、取引の流れが形として整備されています。

日本で置かれた状況

日本では、仮契約と本契約というシステムはありません。購入申込⇒合意・契約準備⇒契約と移行し、契約のあとは決済という流れです。申込から契約までは阿吽の呼吸で進めます。

しかし、複数の購入者がかち合うような安価・良質な物件は、契約をいそがねばならないこともあります。日本の法体系ではこのような流れであるため、ホームインスペクションを行いたい場合には、どこでそれを実施すべきなのかも、悩ましく相談のポイントになってきます。

売買契約の前に実施すべきか

不具合を恐れるからホームインスペクションをやりたいのですから、原則は契約前が良いはずです。インスペクションにより不具合が判明すれば、「直す」「減額する」「契約をしない」という判断をすることができます。

不動産業界団体の売買契約書重要事項説明書の標準的なひな型でも、そのような流れを前提として、書式が構成されています。

しかし、安価・良質な物件ならば、複数の購入者が重なることもあります。商談成立という場面になると、他のライバルが出現することは意外と多いものです。明日でも契約したいからホームインスペクション不要と言う買主がライバルとして出てしまう場合もあります。不動産においては、売買契約の成立は口約束では成立しませんので、売主は、他の買主を選定する自由があります。

そうするとインスペクションに要した5万~10万を意味もなく喪失してしまう可能性もあります。これが契約前にアクションを挟むリスクです。

借地契約

売買契約のあとに実施すべきか

そもそも人気物件の場合には瞬間的なスピードが重要な場合もあります。やむを得ないので、この場合には、契約後、決済までの期間を利用してホームインスペクションをするしかないかもしれません。

ただ、売買契約を行ったあとに不具合を発見すれば、ずるい売主ならば「私の責任ではない」「契約書の記述内容と反するので対応できない」など、逃げる人かもしれません。これはトラブルです。

ホームインスペクションを売買契約の締結後にやろうとすれば、このような場合に備えて、不具合が出た場合の想定を契約書に盛り込む作業が必要かもしれれません。

本来、トラブルを減らすためには有効なはずのホームインスペクションですが、責任感の薄い消極的な売主に対して申し出れば、嫌われてしまうこともあるかもしれません。そもそも、未知のリスクを人間はおそれるものですから、インスペクションをやりたいと言わない、他の買主を売主が選ぶ可能性もあります。

インスペクションをやるべきか

筆者の考えとしては、やる意義は感じます。とくに、古い物件や、補修を入れていない物件です。新しい物件や補修を入れた物件でも、信頼できない施工者と感じれば、やる意義はあります。

筆者がインスペクションにたちあったときは、契約の前の実施でした。若干の不具合の指摘があり、気づかなかった知見を提供してもらって、取引に役立つこともありました。その時にの指摘はエアコン配管を通すための穴の位置の不具合でした。このときは売主さんに対応をしていただきました。

中古マンション

当社のメインのサービスで「仲介手数料無料での購入」を提供しており、リノベーションマンションか新築一戸建てが多く、どちらかと言うとリノベーションマンションが当社では多い商品です。

中古マンションの場合には、柱や梁などの構造部分は管理組合が管轄する部分で、売主様では対応できない部分です。

ハイリスクな劣化事象が存在する箇所といえば給排水管で、売主さんの負担部分なのですが、リノベーションマンションなどは給排水を交換してることも多いです。一戸建てと比べると危険が生じる要素が限定されています。

とくに、瑕疵保証保険を付保していると、簡易のインスペクションは行っていたりもします。

当社の実情に即して言うと、以上のような説明をすると当社が対応するお客様の中では、「まぁいいか」と考えて、お客様のご判断は、実施不要の判断をする人々が多いのもの実情です。

一戸建て

新築ともなると、よっぽど質が低い業者でないと、すぐに雨漏りということもないでしょうし、いまは「品質の確保を促進する法律」等が整備されて、ホームインスペクションがをせずとも、第三者による検査の機会はふえてきました。「まあじゃあいいか」と考えて、実施をしない判断をする方々が多いのもの実情です。

一方で、個人の売主・買主で経年の中古の一戸建てを取引をするような場合ではやったほうがいいかもしれないと感じます。一戸建ては管理会社が入っていないので、修繕管理状況が見えてくることがありません。特に「品質の確保を促進する法律」の施行前の物件は、現行法友反する物件も多いので、大いに実施すべきなのかなとも思います。

インスペクション不可物件

まれに、「ホームインスペクション不可」という物件も見かけます。なにか不安要素があるからこそ、このような制限を設けていると警戒すべきといえます。

インスペクションをする、しないにかかわらず、トラブルに対して責任をもち、ホームインスペクションをして情報共有することに前向きな、落ち着いた売主さんもの物件を対象にして選んでいくしかないのかもしれません。あるいは売主の契約不適合責任免責と同等の注意をもってあたるべきかもしれません。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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