中間省略登記

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中間省略登記とは、流通コストを節約するために、登記簿上は中間者Bを飛ばして直接移転登記をすることをいいます。

現在は、新・中間省略登記とも呼ばれる、「第三者のためにする契約」「地位譲渡」の手法が行われています。

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中間省略登記とは?

不動産の所有権がA→B→Cと移転した場合、本来はA⇒Bの時点とB⇒Cの時点でそれぞれ登記をするべきものですが、中間省略登記とは、主に、流通コスト(登録免許税不動産取得税など)を節約するために、中間者Bを飛ばして登記簿上はA→Cへ直接移転登記をすることをいいます。

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中間省略登記は適法か?

不動産登記の世界では、物権の変動の流れを的確に登記に記載することが基本ですので、原則は、A⇒B、B⇒Cの名義変更の2つを取引を登記簿に記載しなければなりません。

しかし、日本の法制度では登記するか否かは、令和5年の時点では任意です。さらに裁判判例でも許容されていたり、法務局が登記申請を却下する根拠も取り立ててなかったため、実務の世界では非常によく利用されていました。

不動産登記法の改正

平成17年の不動産登記法改正で、不動産登記法第61条により、「登記原因証明情報」の添付がないと登記申請ができないようになったため、虚偽を行わない限り、一部の例外を除き中間省略登記はできなくなりました。司法書士が虚偽の申請に加担することは法律家としての生命線にかかわるため、事実上できなくなったわけです。

第三者のためにする契約

中間省略登記ができなくなりましたので、新しい手法として「第三者のためにする契約」「地位譲渡」という手法が利用されるようになってきました。これらを「新・中間省略登記」ということもあります。このうち、一般消費者が目にする機会があるのは、主に「第三者のためにする契約」でしょう。

「第三者のためにする契約」

元売主が、まだ見ぬ第三者に対して売るという契約です。A⇒Bの第1売買契約書と、B⇒Cの第2売買契約書を作成して、それぞれ第三者のためにする契約が成立するための特約を付します。代金の流れはA⇒B⇒Cとなりますが、所有権の移転はA⇒Cに直接所有権を移転させようとするものです。これを規定する条文は民法第537条に記載されています。

なお所有権が直接A⇒Cに移動はしますが、契約にかかる責任(契約目的適合責任など)は、BがCに対して負担します。

四為・五為・・・

中間者が増加して、第三者と呼ぶべき当事者の数が増加して行う契約を俗に「四為」「五為」・・・・と呼ぶことがあります。スルガショック以降、三為契約に対する目線が厳しくなっており、実績のある売主、仲介業者でないと受け付けてくれなくなりつつあります。四為以上は以前から取り扱う銀行もなかったですが、いまも住宅ローンの取り扱いが厳しくなりますのでかなりの注意が必要です。当社は以前は四為のローンを通したことがありますが(スピードで競り負けたことにより実行には至っていません)、最近はありません。

「地位譲渡」

中間省略登記と同じ効果を契約上の地位を譲渡する旨の契約を締結することにより実現させます。買主の地位の譲渡を利用した実際の契約は、次の2つの契約からなります。

1.売買契約(A→B)

2.買主の地位を譲渡する契約(B→C)

この結果、所有権はAから直接にCに移転します(BC間の契約は売買契約に従属するため、CはAB間の契約内容を知ることができます)。

中間省略登記の目的

中間省略登記にしろ、第三者のためにする契約にしろ、どのような目的で行うのでしょうか。

流通コストの削減

中間省略登記の目的は流通コスト・諸税の削減です。諸税とは主に登録免許税、不動産取得税です。この2税の支払いが結構馬鹿になりません。

資金回転の効率化

もう一つ、大きな中間省略登記の目的は資金回転の効率化です。つまり、中間省略登記を活用することで「売れたら買う(売れ払い)」という流れで物件を転売することができます。

「売れたら買う」などと錬金術みたいでなにか悪どい業者のように聞こえます。一部はそういう業者もいますが、決して悪どいケースだけではありません。たとえば、リノベーション業者などが販売用物件を仕入れるにあたり、仕入れ決済前をするに、元売主の許諾を得て、内装工事をして、同時に販売をすすめるなどという方法は、しばしば見られます。

こうすることで流通コストの低減や借入資金の圧縮もできます。売却価格は市場価格に合わせつつ、買取価格は少し上げたりすることも可能となりますので、物件の流動化に貢献できるようになります。

中間省略登記で注意をすべきこと

第一当事者として売り渡すとき

契約書の文言を読めば複雑なことはありませんので心配は不要です。売主として注意をしないといけないのは、決済期日です。上述で売れたら買う(売れ払い)と書きましたが、売れなかった時の取り決めをどうするかです。

通常の良心的な中間者であれば最終決済の期限を明示して自己資金での取得を明確にします。しかしタチの悪い中間者との契約では最終決済の期限を明示していない約款をみうけることがあります。このような約款で合意をしますといつまでも資金を回収できません。

第三者として買い受けるとき

アフターサービスや契約目的不適合責任は通常の契約と同じですので、過度な心配は不要です。

ローンを利用する場合に厳しく見られます。十分な実績があり、悪質な評判が出ていない中間者であるか、十分に吟味しましょう。

当社の対応

元付の場合には、当社では中間省略登記の契約には応じません。このスキームは、AB間とBC間の契別個のため、AB間の売買代金に知られずに済みます。売主Aから取得した物件を業者Bがなんら付加価値を乗せずに買主の投資家Cに転売するだけです。そのような性質を悪用して、しばしば悪質な業者の関与により、住宅ローンを利用した投資マンションの転売に活用されることがあります。

中間省略登記では、最終取得者がどのような目的で取得するか、元付では見えてこないことがあります。そのため、当社では、元付の場合、お客様の利益を守るためもありますが、なにより当社を守るため、当社では対応していません。

しかし、Bの役割となる売主業者の実績が豊富で、業界内でも地位を気付いている場合もあります。リノベーションマンションなどで付加価値もオンさられていれば、正当な経済活動と認定できます。売主のアフターサービスも適切に実行されると思いますので、客付けの場合で、買主Cの方の利用目的(居住)が明確に見えるならば、当社では対応することがあります。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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