不動産営業マンが「しつこい」「煽る」その事情

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成約の見込みがあれば、しつこくしていてもお客さんの側では問題を感じません。しつこい営業を「熱意がある」と感じるお客さんもいるからです。

成約の見込みが低いと見なされたお客さんは、しつこい営業を行うことで、振るい落すかどうかを判断します。成約の見込みが高くても低くても、しつこい営業が合理的と考える会社は多いです。

しつこい営業を行うことで接触頻度を高める近道です。親切そうに見えても、後々、シツコイ営業で「客を落とす」自信があるだけなのかもしれません。

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不動産業の宿命

不動産業仲介業は成功報酬です。いくら相談のってもゼロにしかならず、契約にたどり着いて初めて報酬がもらえます。しつこい業者をシステム的に排除するには、相談に対してフィーを払う形式、顧問・コンサルタントのようなビジネスモデルがあるべき姿かもしれません。

不動産仲介業のビジネスモデル

不動産業仲介業の手数料は成功報酬と法令で定められています。成功報酬とは契約が成立した場合に限り、手数料が請求できるということです。料率も法律で決まっています。売買の場合ですと、当事者(買主もしくは売主)につき、上限が3%です。賃貸の場合は、取引1件につき、賃料の1か月となっています。

しかも、複数の仲介業者が同じ物件を扱うことができ、内見をした業者とは別の業者に依頼されてしまう場合もあります。

仲介業者の営業マンにとって、契約は決めなくては上司にどやされるだけで話になりませんから、しつこい営業、煽る営業というスタイルを選択する者が出るようになります。

制度に存在する無理

しつこい営業をなくすには、本当は、顧問・コンサルタントのようなビジネスモデルが望ましいと思います。1か月○○円、1件の紹介につき□□円となっていれば、「決まらないほうが売上が上がる」システムになります。提供される物件の紹介や、案内の件数など、検討の機会はドンドン増えてきますし、不動産の検討はものすごく快適になるでしょう。

現状の不動産業、不動産仲介業のビジネスは、獲物をハンティングするようなビジネスモデルです。あらゆるタイプの不動産業者で、しつこい営業に出会う可能性があります。大手・中堅・中小・零細、地場・全国、有名・無名、上場・非上場、外資・国内・・・関係ありません。

社員の出入りが激しい特徴

しつこい営業を好んでしているわけではありません。営お客さんと会えば料理できるというのが発想の原点ですので、とにかく接触機会を多く持って、お客さんと会おうとするのが特徴です。

このようなタイプの営業活動は心理的にも肉体的にもしんどいもので、しつこい営業を会社の方針としている会社は、社員の出入りが激しいという特徴もあります。

不動産営業マンがしつこい事情

営業マンがしつこくならざるを得ないのは、ときには仕事をしているふりをしなければらないこともありますが、なにより、お客さんが買う心境になったタイミングで、その場にいることが重要だからです。

タイミングの物件と営業マン

ほとんどのお客様は、営業マンのことはどうでもよく、関心があるのは物件です。買いたいと思ったタイミングで買いたいと思った物件を紹介する営業マンに依頼するだけです。出来る限り、買いたいと思ったタイミングで存在しようとします。そこで、接触頻度を高めようと努力するようになります。これもしつこくなる原因の一つです。

ときには「仕事をしているフリ」

不動産仲介業者は成果報酬です。営業マンにも成果が求められます。そのため、多くの会社では歩合の比率が高い仕事です。反響の内容から、管理者はできる営業マンには見込み度が高いお客様が割り当てます。しかし、会社の成長のためには、新人の成長も重要ですので、場数を与える必要があります。そこで、見込み度が低いお客様には新人の営業マンが割り当てられたり、勧誘の作業を行わせるのです。急成長しているような、ブラック会社になると、罵声を浴び去られながら仕事をする環境という不動産業者も珍しくありません。お客さんが買う気がある・ないに関わらず、若い営業マンはとにかく週末の見学件数を勧誘する作業を行います。お客さんの案内の約束を取り付けたりして、仕事をしているフリをしなければなりません。

情にほだされるお客さん

接触頻度を高めると、「○○君は俺のために頑張ってる」と勘違いするお客様も出てきます。「頑張ったからお客様が喜んでくれた」となります。成功体験です。こうして、しつこい営業が、延々と繰り返されます。しかし、このようなお客さんは全体の1割か2割です。8割から9割の方にとっては、ありがた迷惑な話です。

上司・会社が怖くて必死

案内を気軽に受ける不動産業者があります。出稿料金が高い不動産サイトに大量に広告を打つ会社などです。このようなタイプの業者さんでは、初期のご案内対応では、知識や経験が浅い営業マンを派遣することがあります。実は、業者内部では、若い営業マンのミッションとして、来店数をノルマに課しています。来店数がKPI(業績を評価する重要な指標)になっている業者もあります。

とにかく商談をきめるため、次の商談に生かすため、能力のある、上司につなげるたいのです。来店までつなげられないと、上司から、若い営業マンは「どやされて」しまうこともあります。

大量に広告を打てる会社とは、ある程度大きな会社であり、組織的に動いています。見込が薄い(不明)ところには、優秀な営業マンを初動で派遣する必要もないですし、できないのです。そこで、営業トークで、「とりあえず事前審査をしてみませんか」「とりあえず説明を聞きに来ませんか」など、来店を促すようにトークを必死に繰り広げるようになります。

シツコイ営業の見分け方

とくかく接触機会を多く持とうとするのが基本です。しつこい営業により「至れり尽くせりの接客や対応のコストを回収できる自信」がありますし、回収しなければなりません。

車での案内・ご自宅への送迎が売り

「車で案内!」などのフレーズが躍る不動産広告があります。親切そうに見えますが、本当の狙いは当日のお客さんの動きを制御することにあります。物件見学から来店へと促し、申し込みをとる作戦です。

ちなみに、筆者は不動産購入の内見で、車での移動をお勧めしていません。お勧めしないのは、歩くことで確認できる実際の生活のアプローチや周辺の環境の視察が大雑把になって、体験するプロセスが取れないからです。

知っている気になってる町でも、生活を開始すればドンドンあらは見えてきます。内装は変えられますが、生活環境が動かせません。動かせない財産だからこそ、不動産なのです。

ときどき、「どうやってたどり着くかわからない」ので車の案内を希望されるお客さんもいらっしゃいますが、「無事に行けるか分からない」のであれば、そのような物件は買うべきではないのかもしれませんね。

即日対応可能、休日なしなどのフレーズ

「年中無休!」「本日見学できます」「夜間見学可能」との文面が広告に見れるのも特徴です。お客さんが物件の見学に至るまでの心理的な障害をなくし、お客様と業者の接触機会を増やそうという作戦です。

しかし、「本日見学歓迎」などのフレーズが躍るのは、お客様が思いついたが吉日とばかり、勢いのままで購入申し込みを取り付けようとする作戦です。見学から翌々日くらいの契約を狙っています。くらいついたら離さない覚悟が不動産業者の側にはあります。

物件よりも営業対応を押す

「女性担当者が対応」「提携ローン金利〇〇%!」など本質と関係ないことを前面に出していることがあります。不動産広告の主役はあくまでも物件です。

suumoでよく見る

不動産セールスはお客さんの関心が発生しなければ始まりません。つまりお客様の積極機会を持つためには反響数が多い方がいいに決まっています。そこで、いかにして反響を取り付けるかが重大な関心となります。

住宅情報系の老舗であるSUUMOは反響が大変多いサイトです。しかしSUUMOは広告費が高いことでも知られています。

高い媒体を利用するからには、「お客さんを確実に仕留め」なければ、営業マンは上司の大目玉をくらいます。このように、しつこいセールスをする営業会社は営業力には自信があるので、高い広告費を回収できる自信があります。広告費が高かったとしても、それでいいのです。

プレゼントで集客

「〇〇券5,000円分プレゼント中」などのフレーズが躍る広告を出す会社さんがあります。プレゼントの仕入れはお金がかかるわけですから、来客したお客さんを確実にものにできる自信があるといえます。営業力にはよほどの自信があってのことでしょう。

また、プレゼントをもらえば断ることができない心理状況に追い込まれます。「返報性の原理」といいます。セールスの基本テクニックです。気軽に次のステップに進むことを促されていきます。いつの間にか気に入って申し込みを入れていたということになるでしょう。

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大事なお金を投資して回収できる自信があるわけですね。



お客様を煽る不動産営業マン

営業マンがお客様を煽ったり、しつこいトークをするのは、そうしたほうが得策だからです。

親族、友人など、営業マンとお客さんで人間的なつながりがあり、必ずその営業マンで決めるという事情があれば、営業マンは煽ったりしつこくしたり、無茶な営業はしません。次の機会を待てばいいからです。

しかし、通常は決まらなければ「さようなら」です。買いたいと思ったタイミングで買いたいと思った物件を紹介する営業マンに、お客さんは依頼します。後日、その営業マンで決めてくれるという保証はありません。

もしお客様が物件を気に入らなければ、煽っても、煽らなくても「さようなら」です。ならば、復活の機会がある煽ったりしつこいセールスをしまくって、その場のワンチャンスの望みをかけるほうが、価値があります。

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煽るか煽らないかの【決定木】

しつこい営業マン、煽る営業マンへの対処

しつこい営業マン、煽る営業マンとは、どの町にも必ずいますので、避けることができませんが、気を付けることはできます。

評判を確認する

口コミサイト・ラインキングサイトの信頼性は低い

不動産広告サイト、不動産ランキングサイトの口コミは、一切信頼することができません。自作自演も容易ですし、運営者からお金をもらっています。当社にもセールスに来ます。

信頼できるとすれば

口コミサイトで信頼できるところはありませんが、もしあるとすれば、グーグルマップの★マークでしょうか。グーグルは評判をサイトで公示することでお金をもらっているわけではありません。検索エンジンの運用のために実施しています。検索の上位表示すべきかどうかの判断のため、情報を収集しています。

あとは、掲示板サイト。【○○(社名) 掲示板】で掲示板は匿名で信頼に欠ける部分もありますが、複数の投稿があれば、信頼できる可能性、警戒すべき予兆としてとらえることができるでしょう。

決まらない相談をしない

具体性のあるお客様は、ぞんざいに扱うことはありません。相場とずれたご希望や、購入の時期が未定のお客様であれば、いつ決まるかわかりませんので、上述の通り、さようならを覚悟でしつこい営業・煽る営業にかけてくる輩も出てきます。

したがって、しつこい営業をされるものだと思っておいたほうがいいかもしれません。

煽られたら鵜呑みにしない

「売れる物件」「売れている営業マン」「信頼に重点を不動産会社」であれば、そもそも、煽ったり、しつこい営業をする必要がありません。このようなタイプのセールスは絶対に鵜呑みにはしてはいけません。

煽られているとき・しつこいセールスをされているときには、判断を圧迫されると来る不快な感じがあります。「ウッ」とする感じです。これを感じたらすぐに逃げましょう。

きっちりと拒否してあげる

このように避けたとしても、不動産を検討しているうちに、必ず1回か2回は出会ってしまうでしょう。その場合どうすればいいでしょうか。明示的に断ることが重要です。

日本人は角が立つコミュニケーションを避けようとします。日本社会のいいところでもありますが、しつこいセールスには悪影響です。仲介業者からの提案に対し、「見ておきます」「検討します」と答えがちです。

「見ておきます」「検討します」ではなく、「いりません」「来ないでください」と発声しせねばなりません。

上司や会社に煽られた営業マンはロボットです。あいまいな返答をすれば次につながったと良い方に勘違いして、次につなげます。しつこい営業に対する返事は必要か、不要か、この2語に限ります。

警察

「帰ってください」と要求したにもかかわらず、居座り続ける場合には「不退去罪」という罪が成立します。すぐに警察を呼んでください。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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