LGBTの方の住宅ローン

lgbt_rainbow_flag

LGBTとは

LGBTとは

ご当事者の方はご存じとも思いますが、ご存知のない方々向けにも説明をしますのでお許しください。非常にシンプルに申し上げますと、LGBTとは以下の4つの用語の頭文字から作られた言葉です。

レズビアン(L):女性の同性愛者。(Lesbian)

ゲイ(G):男性同性愛者。Gay

バイセクシュアル(B):バイセクシュアルとは、両性愛者。Bisexual。伝統的に「男性・女性双方に性的魅力を感じる性的指向」として定義されている。

トランスジェンダー(T):ジェンダー・アイデンティティ(性自認)が、身体の性別とマッチしない人。Transgender。

wikipediaによれば、性の多様性という意味で、肯定的な含意があるとされています(⇒説明)。当事者の方々からすれば、もっと複雑多様な性指向あると思いますが、ここでは住宅ローンに関する記事として、4つの類型に分けてご案内します。

LGBTの方の親族と権利関係

LGBTの方と住宅ローンの関係で大きな影響があるのは、「収入合算」(連帯保証・連帯債務)や「ペアローン」です。これらは、夫婦もしくは親子などの法律に基づく親族関係がなければ、金融機関は対応してくれません。物上保証(担保提供者:共同名義人だが住宅ローンは組まない人)も同様です。法律的に赤の他人だったりすると、延滞があったとき、責任を追及できないからです。

この問題でLGTBの方々が向き合わなければならないのは、民法です。親族法・相続法、そして保証・連帯保証・連帯債務がポイントになります。

現在の民法の原型は明治時代に成立したものです。明治時代の家制度のころは性的多様性は保護されるべき権利として認識されておらず、LGTBの方々の存在を想定していませんでした。

後述のパートナーシップ制度など、自治体においておは婚姻関係を認定するシステムが出始めてはいます。日本国憲法の「婚姻は両性の合意によってのみ成立する」という記述がありますが、国の方向性としては、具体的には権利の尊重の方向には舵を切れておらず、法令の改正・解釈の変更は、これからの課題だと思います。国の対応は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」にとどまるのみで、親族法の改定はこれからの課題というのが現状です。

パートナーシップ制度

パートナーシップ制度とは、地方自治体が、同性カップルに対して、二人のパートナーシップが婚姻と同等であると承認し、自治体独自の証明書を発行する制度です。2015年11月5日から東京都渋谷区と世田谷区で同時に施行されて、先鞭をつけました。渋谷区と世田谷区の違いは、渋谷区ではパートナーシップの認証において、後述の合意契約の公正証書の提出が必須であることです。渋谷区のパートナーシップの方が、要件としては厳格なものとなっているいえます。

なお、現在では、次の自治体が制度を導入していますが、住宅ローンの世界で利用できるものは渋谷区のパートナーシップです。

  • 東京都渋谷区 2015年11月5日
  • 東京都渋谷区 2015年11月5日
  • 東京都世田谷区 2015年11月5日
  • 三重県伊賀市 2016年4月1日
  • 兵庫県宝塚市 2016年6月1日
  • 沖縄県那覇市 2016年7月8日
  • 北海道札幌市 2017年6月1日
  • 福岡県福岡市 2018年4月2日
  • 大阪府大阪市 2018年7月9日
  • 東京都中野区 2018年9月6日
  • 群馬県大泉町 2019年1月1日
  • 千葉県千葉市 2019年1月29日
  • 熊本県熊本市 2019年4月1日
  • 東京都府中市 2019年4月1日
  • 大阪府堺市 2019年4月1日
  • 神奈川県横須賀市 2019年4月1日
  • 岡山県総社市 2019年4月1日
  • 神奈川県小田原市 2019年4月1日
  • 大阪府枚方市 2019年4月1日
  • 東京都江戸川区 2019年4月1日
  • 東京都豊島区 2019年4月1日
  • 栃木県鹿沼市 2019年6月1日
  • 宮崎県宮崎市 2019年6月10日
  • 茨城県 2019年7月1日
  • 福岡県北九州市 2019年7月1日
  • 愛知県西尾市 2019年9月1日
  • 長崎県長崎市 2019年9月2日
  • 兵庫県三田市 2019年10月11日
  • 大阪府交野市 2019年11月22日
  • 神奈川県横浜市 2019年12月2日
  • 大阪府大東市 2019年12月4日
  • 神奈川県鎌倉市 2019年12月4日
  • 香川県三豊市 2020年1月1日
  • 兵庫県尼崎市 2020年1月6日
  • 大阪府 2020年1月22日

最新の情報はリンク先の「同性パートナーシップ証明制度とは」もご確認いただくといいでしょう。

任意後見契約と合意契約の公正証書による関係性の確認

渋谷区以外では住宅ローンが利用できないかというと、そうではありません。一部の銀行では、パートナーの二人が、相互に相手方を任意後見受任者とする任意後見契約に係る公正証書を作成していることを確認することで、住宅ローンの受付をしています。

任意後見契約とは本人の判断能力が不十分となったときの自分の生活、療養看護および財産の管理について、あらかじめ、任意後見受任者に代理権を付与する委任契約です。任意後見契約、将来、本人の判断能力が不十分となった場合に、任意後見人が契約に基づいて本人の生活を守ることを目的としています。

なお、任意後見契約の作成にあたっては、「任意後見契約に関する法律」という法律により、公正証書を利用しなければならないことが法令に定められています。公正証書とは、権利や義務に関する契約を法令に定めた方式で「公文書」として作成した証書です。公証役場のお役人が契約書を認証します。10万円弱の手数料がかかります。

要は、パートナーの二人が、籍を入れた夫婦のような関係性を構築して、契約書面によってお互いが縛っていることを、銀行は確認したいのです。

LGBTの方の生命保険

LGTBの方々が不動産における接点で忘れてはならないのは、生命保険です。住宅ローンを利用する場合、団体信用生命保険に加入することが必須となります。団信の利用は問診票に自己申告で記入するだけの簡単なものですが、事実と異なることを書けば、パートナー等に迷惑をかける恐れもありますので、気をつけなければなりません。

トランスジェンダーの方々の場合は手術をうけ、ホルモン剤などの投与を受けることになりますから、「継続診療中」という状態となります。このことは不利になる場合があります。

また、抑うつ状態の経験があるのはレズ・ゲイ・バイセクシャルの方は25%、トランスジェンダーの方は35%という調査もあります。保険会社が規定する所定の期間内に、投薬、問診、カウンセリングといった医療サービスを受ける機会があったのならば、これらも率直に申告する必要があります。

住宅ローンの実務とケーススタディ

レズ・ゲイの方

ゲイ・レズの方がローンを組む場合、単独で組まれるのであれば、特に問題は生じません。収入合算でローンを組もうとする場合には、パートナーシップや後見契約などの方法で関係性を説明する必要があります。

なお、パートナーの方のどちらか単独でローンを組む場合には、パートナーシップの有無にかかわらず、戸籍上は「単身者」となります。その場合、単身者の住宅ローンが焦点となることがあります。購入物件の間取、お客様の年代、自己資金などで、単身者としてのハードルが生じる場合があります。

トランスジェンダーの方

トランスジェンダーの方々は単独で組む場合は差しさわりはないのはもちろん、収入合算で組む場合も、婚姻により法的に戸籍を新製したカップルであれば、法律面での差しさわりは一切ありません。住宅ローンの必要書類は住民票だけで戸籍を提出することはありませんので、性転換手術のことを金融機関が関知することもありません。

しかし、団体信用生命保険(団信)の申し込みの段階でハードルが生じます。過去や現在において、受診した事実の記入を要するからです。性ホルモン薬の投与が必要なことが多いと思いますが、筆者の経験ではFtoMのお客様で、ネビドを服用されたお客様の住宅ローンを複数の金融機関に挑戦したことがあります。団体信用生命は承認の保険会社と謝絶の保険会社の二手に分かれました。

団信が最終的なハードルとなった場合には、団信を利用しない住宅ローンを選択する方法もあります。フラット35においては団信が必須ではありません。一般銀行では、配偶者の連帯保証とすることで、団信を利用しないで組むローンを承認する一般銀行もあります。

バイセクシャルの方

バイセクシャルの方のパートナーが異性である場合には住宅ローンの世界ではハードルはありません。パートナーが同性である場合には、「レズ・ゲイの方」の段落に準じて対応を進めることになります。