生産緑地問題で不動産価格は下落する?

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生産緑地にかかわる2022年問題とは、2022年に生産緑地の固定資産税・都市計画税の優遇措置の期限切れが到来することで、一斉に生産緑地が売りに出され、地価に重要な影響を及ぼすとされる問題です。

この問題が原因で購入者が期待するような暴落は生じないでしょう。なにより、地主の行動原理は「土地を守る」です。「土地は先祖代々のものであり、我々を食わせてくれる資産」と地主層は考えているからです。

また、実際には手はすでに打たれています。急激な緑地の減少は行政も望むところではないからです。この問題の実相は、視聴率、pv、発行部数のアップを狙ったものだと思います。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

生産緑地とは?

東京や神奈川のような都市部でも、郊外地域の住宅地のなかに畑や田んぼがあるのを見たことがありませんか?あれが生産緑地です。

「生産緑地」は、良好な都市環境の形成を図るために、市街化区域内農地の緑地としての機能を活かし、計画的に農地を保全していこうとして設計された制度です。

農地

生産緑地と宅地並み課税

高度経済成長時期、団塊世代が出産を経て住宅取得時期になるとバブルが進行していきました。それに応じて、日本は重度の住宅不足に陥いりました。そこでときの政府は関東圏・関西圏・中京圏の三大都市圏において、市街化区域内であれば宅地並み課税とすることで、市街地における住宅用地の供給を促す政策を採用しました。

農地が宅地並みに課税されると固定資産税は数十倍高くなります。固都税が50倍、100倍などになると数万円だったものが、数十万、数百万となります。いきなり税金が上がれば払えるわけはありません。

1992年の生産緑地法改正

ただそうなると、農家側も黙ってもいられません。しっかりと反対をしました。また、折から、今度は都市の緑地の不足が言われるようになりました。そこで、今度は反対に1992年に生産緑地法が改正されるようになりました。

このときの改正内容としては、三大都市圏に存在する500m2以上の土地については、農地として利用するという条件で税の優遇措置が受けられることになりました。つまり、生産緑地に指定されると、税制面での優遇措置として、固定資産税及び都市計画税が宅地並み課税から農地課税に変わるほか、相続税等の納税猶予を受けることができました。一方で、所有者は生産緑地を農地として管理することが義務付けられ、公共施設等を設置する場合や、買取申出により行為制限が解除された場合などを除き、農地以外での土地利用に制限がかかることになりました。

このとき、優遇措置の期間は1992年から30年間とされました。1992年といえばバブルが崩壊したころです。バブルが終わると土地の需要は減りましたので、土地供給を抑制するのには、時宜にかなった施策だったと言えます。

生産緑地にかかわる2022年問題

さて、法改正は1992年で、優遇措置の期間は30年でした。つまり、優遇措置の期限が2022年に到来します。生産緑地にかかわる2022年問題では、一斉にこれらの土地が売りに出されれば、地価に重要な影響を及ぼすのではないかと予想する向きがでてきました。つまり、「地価が下がるのでは?」ということです。

実は、生産緑地解除の問題については、すでに2017年の時点から結構話題になってました。

生産緑地は多く売り出されるのか

一人の不動産屋としては不動産価格は下がってくれる方が仕事がしやすいとは思ってはいます。住宅購入を検討している人はしばらく待てば安くなると考えたいところです。実際はどうでしょうか。結論からいうと、地価に与える影響は一切ないとは言えないかもしれませんが、微々たるものだと思います。

課税されても売るだけが選択肢ではない

地主という階級は土地を手放したがらず、守りたいという発想からスタートします。いま生産緑地として市街地に存在している土地は、江戸時代やその前の時代から、代々引き継いできた土地です。一族や利害関係人も多くいます。先祖代々の土地を売りたくないから生産緑地として指定した背景があります。

したがって生産緑地の解除後すぐに売りに出す人と考えるのは、これらの心情を無視した荒唐無稽な議論です。少なくともメディアで騒がれるほどのものではありません。2022年の生産緑地解除問題の実相とは、視聴率、pv、発行部数のアップを狙ったものだと思っています。

運用をする

形状が良い土地、好立地の土地など、有料な土地を所有してる地主ならば、生産緑地を解除されてもびくともしません。まずは賃貸マンションなどの収益物件を建てる可能性があります。資産家に対する融資のバックアップは、ノンバンクだけでなく、信用金庫、信用組合、地方銀行、 メガバンクなど、ラインナップに困ることはありません。代々の土地を売らずに守ると考える地主は、ここから発想します。

特定生産緑地

実は、生産緑地制度の維持は行政の意向もあります。行政の思考は地価の安定だけではなく、環境、防災など、様々なニーズにより生産緑地を生産緑地として残しておきたい意向があります。

そこで、2017年の生産緑地法が一部改正されて、「特定生産緑地の指定制度」ができました。これは2022年以後においても、10年ごとに繰り返し生産緑地の指定が可能となる制度です。2022年に再申請をすれば固定資産税の減税を10年間期間延長できるようになっています。さらに、この制度はさ10年後の2032年にも再々延長を可能としています。つまり、ずっと固定資産税の優遇措置を受けられるというものです。

さらに、加え生産緑地指定に必要な面積を500平米から300平米に改正をしました。かつて500㎡だった土地を分割して、孫・子が家を建てる用地として提供する場合にも地主層が対応しやすいように配慮することで、生産緑地として維持するよう、誘導しています。

営農を続けやすい施策

改正生産緑地法では、単に農耕をするだけでなく、関連事業にも利用できるようになりました。たとえば地元の農産物等を用いた商品の製造・加工・販売や、地元の農産物を用いたレストランのための施設を設置することができるようになります。

生産緑地の解除は少ない

このような施策の結果、生産緑地として再指定の意向がない土地は、生産緑地全体の9%にとどまっています。

たとえば、東京都では約2428ヘクタールの土地が生産緑地指定されておりましたが、国土交通所の調査によれば、令和4年3月の時点で、特定生産緑地として再指定の意向がある農家は東京都で93%です。普通の宅地にしようとする人は、実に7%にとどまっています。また、神奈川県で90%、千葉県・埼玉県で87%が、指定済みもしくは指定見込となっています。

特定生産緑地指定状況のリンク(国交省)

市場への影響

この9%の中から、上述のようにアパートやマンションとして運用、営農関連施設が運営されます。それでも残った土地が売りに出されるわけですが、ここまで絞られると、インパクトとしてはかなり絞られます。

インフレなどの要因と競合するか?

2022年に生産緑地解除問題で土地価格が値下がりするのと、ウッドショックやウクライナ紛争、円安により建物価格が値上がりするのはどっちの影響が大きいでしょうか。2022年ではすでに世界的なインフレ日本も巻き込まれるカタチとなっています。実際に資材が入らないという事態が生じています。とくに一戸建てのカテゴリ―で材木の問題が重要で、良質な木材を供給するロシアからの輸入がストップしています。

よって、起こるか起こらないか判らない地価の下落よりも、現に生じている建物価格の値上がりのほうが、影響が大きいかなというのが、筆者の見解です。

温存された需要

ただ、生産緑地の開放を狙って取得を待っていた(ためらっていた)という人がいるのも事実です。これらの方々は、地価が動かないのを見れば、徐々に需要に転ずることになります。

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