築古マンションのメリットやリスク

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中古マンションの検討の築古物件は価格が安く、多くの場合、好立地であることが魅力です。古いということは土地の開発余地が多い時代に建設されたからです。

リスクとして気になる部分は、大別すると耐震と配管(給水・排水)ではないかと思いますが、それに関連して、利用できる住宅ローンの範囲が狭くなることもあるかもしれません。

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築古物件とは

築古とは築浅の反対です。築浅とは建物ができてからまだ日が浅いことを意味しますので、築古とは建物ができてからまだ時間がたつことを意味すると考えられます。「築1年以内でかつ未入居物件」という明確な基準がありますが、築古にしろ築浅にしろ定義は特になく、何を以て築古とするかは難しいところです。各種調査を見ると、築浅は5年以内と考える方が多いようですが、不動産広告を見ていると、10年以内であれば、このワードを使っているものと感じます。

一方で、表題のように築古となるとリスクを感じる方も出始めます。実際のところ、リスクは丁寧に検討すれば恐れることもないのですが、リスク的な要素も勘案しなければならない部分もあります。そこで、本稿では各種税控除の境目となる年代で、二回目の大規模修繕が想定される、築25年~30年以上を想定します。

リスクは大別すると耐震と配管(給水・排水)ではないかと思います。

キッチンや照明など、設備の古さなどもリスクと認識することも可能ですが、形あるものはいつか壊れますので、自分で対処できることはすぐに対応できますので、リスクとして認識する必要はないと思います。

耐震について

新耐震ならびに新耐震同等

耐震適合
耐震適合マーク

築古物件で、まず気にしなければならないのは耐震です。ただ耐震については評価すべき項目と確認方法が明瞭ですので、リスクを気にする必要がないところまで調査が可能です。新耐震であれば、リスクは気にすることはないと言ってよいでしょう。昭和56年6月以降に着工した物件を新耐震といいます。

時期的に旧耐震でも耐震診断をしており、is値が全フロアで確認できれば、リスクは軽減できます。耐震改修促進法等では耐震指標の判定基準を0.6pt以上としており、倒壊、又は崩壊する危険性が低いと判断されています。この数値を全フロアで出していれば、新耐震相当と判断できます。ちなみに、この数値は、昭和43年の十勝沖地震及び昭和53の年宮城県沖地震で中破以上の被害を受けた建物群のis値分布の検討により導出されています。

耐震診断のない旧耐震

築古マンションの検討の際、悩ましいのは耐震診断をしていない物件です。以下の2つのタイプは

鉄筋コンクリート造壁式工法の物件

以下のような物件は鉄筋コンクリート造壁式工法(プレキャスト鉄筋コンクリート造)の可能性があり、実際には耐震性が高い可能性があります。

○5階以下
○ようかん型の箱型・四角い建物
○階段タイプ
○柱の出っ張りがない

非常に判りやすく言いますと、「団地」です。団地タイプの建物は鉄筋コンクリート造壁式工法(プレキャスト鉄筋コンクリート造)の可能性があります。部材が工場づくりでコンクリートで精度が高く、箱型というのが重要で、箱型エレベータシャフトがないため、地震の応力にバランスが良いそうです。壁面は工場づくりですので、一定間隔のパネル風になっています。一定間隔の目地があれば、可能性を検討できます。さらに言うと、鉄筋コンクリート造壁式工法(プレキャスト鉄筋コンクリート造)の場合には簡易な壁量計算とコンクリート強度の軽易な診断で対応でき、新耐震と同等として、耐震基準適合証明書により、ローン控除等の税控除を受けられる場合もあります。

3階建ての低層住宅(第一種低層住宅専用地域の低層住宅)でも壁式工法を採用するケースが多いようです。周辺の建物が2~3階建ての戸建てであれば可能性は高まりますので、確認をお勧めしたいです。

都立家政シティハウス外観
低層住宅は耐震バランスが良いことが多い

フラット35適合証明が取得可

フラット35とはローンの商品ですが、公的団体によるローンで、物件にも技術基準があります。技術基準に合致することを証明する書面がフラット35の適合証明です。この基準なかには耐震に関する評価もポイントとなります。フラット35=新耐震ではなく、その意味ではフラット35の利用可否が全幅の安心の目安にはなりませんが、少し期待をしてもいいでしょう。

技術基準というのはどのような点を評価してるかというと、独立柱(耐力壁がなく孤立している柱)がないこと、ピロティ構造ではないこと、形状のバランスが良いこと等が挙げられています。以前段落で箱形・四角の建物が望ましいと記述しましたが、フラット35の技術基準でも同様の評価をしています。ただし、L字・凹の物件の場合については、エキスパンションジョイントで接合して、地震力が分散可能な形状が望ましいです。フラット35ではそれは厳密には見ていないようです。

通常の旧耐震

フラット35の利用可否の明記は無くても、記述基準の適用可否は目視で推測できますので、お付き合いのある不動産業者、建築士等にご相談されるとよいでしょう。

配管の劣化

配管の劣化は具体的には漏水のリスクです。漏水は給水管のさび、排水管の目詰まりによって起こります。地震・耐震のような事項とは異なり目で見えない部分です。そのため不動産業者の重要事項の調査では浮き彫りにしにくい項目です。建物診断(インスペクション)を利用すれば情報を取得できるところでもありますが、5~10万円のコストとがかかりますので、見学物件全てを診断して回るのも難しいでところです。

ただ、日ごろの点検・清掃で配管の劣化は回避できる部分でもあります。つまり管理状況が配管面の肝心となります。管理状況が良ければ劣化の進行を止めることができます。また、終局的にはリスクをゼロにすることはできないので、保険で対処していただくことになります。

古い配管の部屋

管理状況のチェックポイント
管理の重要事項報告書の記載内容
修繕積立金の残高
管理規約の有無
修繕履歴・長期修繕計画の有無
共用部の清掃状況、劣化状況(チラシが散乱している・掲示が古いなどから始まり、使いづらいにも関わらず余りにも古い設備等々)
メンテナンスの状況(小さなクラック(ひび割れ)程度なら気になりませんが、重度の鉄部のさび、配筋の露出等は気にしたいところです)

その他のリスク

管理費のアップ・一時金の追徴

修繕積立金の残高、長期修繕計画の確認でリスクの回避も可能ですが、あまりにも安い場合、将来の値上げを気にしなければなりません。ただ、中古マンションの場合は実際に住んでる人もいて、住んでいる人たちの自主性(管理組合の自主性)によって決定していくものです。突然大幅な値上げを判断することもまれです。極めてまれに、意識的に新築時に値上げを決断する組合もありますが、多くは、10年くらいに1.5~2倍、20年くらいに同様に1.5倍くらいになるイメージはあります。自主性で判断されるものなので、けして一様ではありません。

建替のリスク

分譲マンションの場合は一棟の建物を所有者が全員で一部づつもっているという不動産です。管理会社が保有しているわけではありません。建替えとなった場合には持分に応じて建築費の負担をするのが原則です。

築が古い集合住宅では多様な利用形態、所有者年代が交わってきますので、建替えをしようにも利害が錯綜します。日本には1950年代から始まった分譲マンション文化は発展し、平成30年を前にして、600万戸以上となりました。しかし、実際に建替えが成功したマンションは、平成28年230棟弱です。たったこれだけということもできるレベルです。区分所有法の規定に基づき、全区分所有者の4/5以上の賛成が必要であるため、なかなかそこまでたどり着けないというのが実情です。強制的に建替え巻き込まれるリスクは気にすべきポイントではないと言えるでしょう。

なお、提案が始まれば管理会社が把握できますので、不動業者の重要事項調査によって把握できます。また、実際に建替えを決断しても、実際に建替えの着工に到達するには複雑な権利関係の調整と交渉が必要になります。作業は10年~20年という長いスパンのものなります。

建替え

建物躯体・リフォームの制限

天井高が低かったり、柱や梁が出っ張っていたり、古いマンションは設計の古さから起因する要素があります。好きな位置に水回りを変更したり、天井高を調整したりすることは難しくなります。これはリスクというより、気を付けなければならないことですが、リフォームの制限となりえます。

昭和40年代・50年代のマンションだとスラブ下配管というのが一般的です。これはコンクリート床の下の部分(下層階の天井裏の部分)に配管が通っている建物を指します。下層階の方の協力を得ないと交換できないので、メンテナンスが行き届かなくなりがちになり、漏水のリスクが高くなります。

事務所利用と不特定多数の出入り

築年数の古い中古マンションや都心のマンションでは、事務所としての使用を認めていたり、そもそも用途を定めていないこともあります。入居者としては、都心性が重視される業務、たとえばデザイン事務所、士業(税理士・司法書士・行政書士等)、設計事務所、小規模な不動産業などが考えられます。事務所で利用されるマンションは、区分所有権をを買って事務所として使用しているケースと、マンションの所有者から借りて事務所として使用しているケースがあります。後者のほうが多いようです。そのようなマンションは賃貸に出されていることも多いため、現在、隣接の住戸が住宅利用だからといっても、将来は事務所に転用されることもあります。

居住用のマンションとして住むならば、住人以外の方が多く出入りすることは、あまり歓迎できないことです。事務所使用により、防犯上の問題が生じます。管理規約で事務所の使用を認めているときは、その業種や使用方法などに細かな制限があり、他の居住者に配慮されているかも確認しておきましょう。事務所から生じる音も問題です。頻繁に電話が鳴ったりコピー機の音が響いたりすることもあります。都心のマンションでは、住宅として購入・賃貸をされる方は、気をつけて音を確認するなどの配慮が必要かと思います。

ちなみに住宅地エリアのマンションは、管理規約などで事務所としての使用を禁じていることが多くあります。ただ、SOHOの方が事務所兼自宅でつかうなどまで規制するケースは少ないようです(騒ぎを起こさなけれればわからないという側面はあります)。

なお、事務所としてマンションを借りたい人にとっては、事務所使用可能か否かは確認すべき重要なことです。タカをくくっていると、管理組合の決議によって退去を求められることあります。事務所利用を禁止されるポイントは、不特定多数の人が出入りすることです。

実際に事務所として使用されている住戸があるかどうかは、管理規約で事務所使用を認めているかが第一です。また、管理人への確認、集合ポストの表札を確認することでも可能です。

メリット

築が古いことによるメリットもあります。リスクにより想定される事象をメリットが上回る場合、売れる物件ということになります。

価格的安さ

築が古い物件は築浅と比べると価格が安い傾向にあります。そしてリノベーションをすることで価値がいくらか回復していきます。

好立地

昭和30年代、40年代前半のむかしには渋谷の駅前にもマンションが建っていて、東京湾の汽笛の音が聞こえたそうです。そのような時代に立ってるマンションもあります。さすがにそんなに古いマンションばかりではないですが、いまは都内の立地は開発が進み、マンション業者の新規取得は困難になっています。これらも新築マンション価格が上昇する一因になっています。好立地にある築古物件は、先行者利益と言い換えることもできます。

物件・管理の状況が確認可能

「管理の重要事項調査報告」を取得すれば管理状況のデータはおおむね確認できます。お隣さんの状況は調査することはできずとも、様子くらいなら確認することはできます。これらは建っているからこそ確認できるメリットです。

この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。デリードコーポレーション(現株式会社セレコーポレーション)でマンションのマーケティング・商品企画を、ヤマト住建株式会社で建売分譲の開発と販売を経験しました。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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